奇跡の腕を持つ天才外科医ブラックジャック、無免許だがその腕は今日もどこかで奇跡を生んでいる。
医者の漫画としての走りだと思う。
手塚治虫は医学博士の免許も持っているので人間の内臓や体の描写もリアルで臨場感がある。
医者は命を扱っている仕事なのでそこには数えきれない人間ドラマがある。
天才外科医がゆえに医学の限界、神が与えた理不尽な運命、オペするだけが私の人生と言い切るブラックジャックは数々の名言を生む。
「医者は体の傷は治せてもねじれた心の傷までは治せん!」
手術が終わり満天の星空をひと筋の流れ星が落ちてゆくのを見て、
「流れ星となって1つ1つ消えていくように見えても星の数は一向に減らない、病気っていうのはこんなもんなのかもしれないねえ」
テロリストの爆破で停電になり手探りでオペをして患者を救い他の病室で5人の重症患者が亡くなったのを聞き、逮捕されたテロリストに
「大したやつだな、簡単に5人も殺すなんて、こっちは一人助けるだけで精一杯なんだ」
そう言って去っていくブラックジャック。
一つ一つが私の心にジンと心に残る名セリフとなっている。
消えるはずだった患者の命を救い新しい人生生活へと導くこんなすごい職業があるだろうか。
救えなかった命、医者が治療するしないに関わらず、天へ召されるものは召され助かるものは助かるそれが神様の思し召しだとしたら医者は何のためにあるんだ、自分が治療していた伝染病にかかり自分の命と引き換えに血清を残して死んでゆくドクターの亡骸を抱えブラックジャックは怒鳴る、医術は万能ではなくおごるべからず、恩師の遺言を胸にかみしめる彼に深い共感を持った。
ブラックジャックのあとに衣料を扱った漫画が次々出てテレビドラマ化もされているがこのブラックジャックの世界だけは映像では表現しきれないものがあると思っている。
医療はビジネスにしてはならない特別な分野だと思っている。