バナナフィッシュという未知のドラッグをめぐるマフィアのボスと彼の男娼としての商品だった17歳の少年との戦い。
人間に悪夢を見させ、命令を刷り込むとその通り実行してしまい、最後は自己破壊行動に出て自分の命を絶ってしまう。恐ろしいドラッグである。
それを軍事兵器として応用し合衆国と取引を私用とするマフィアのボスとそれを阻止し要とする少年。
米軍や政府高官、シャイニーズマフィア組織、傭兵部隊、元ソビエト軍事エリートの殺し屋、アメリカ不良少年団、様々な登場人物が現れる。
少年の行動原理は、俺は誰にも支配されない、力で屈服させようとする者には力で対抗するまさに殺し屋の発想。
人間の支配欲と権力欲はとめどないなと実感させられる。
ボスには絶対的な服従者と敵対者しか必要ない、そういわれながらマフィアに追われる身でもなくニューヨークの闇の後継者候補でもない17歳のただの少年として自由に生きる道を選ぶ主人公、いつの間にか主人公のファンになっていた。
知能指数IQ200の頭脳を持ちスワットクラスの銃のシューティングテクニックを持ち、強靭な精神力、鍛え抜かれた鋼のような体、ヨーロッパの社交界でも通用する金髪、グリーンアイズの容姿を兼ね備え、ニューヨークの裏社会の魔王になる才覚を持ちながら、憎んで覇者となるよりも愛して滅ぶ道を選ぶ主人公、いつの間にか絶対に死ぬな、生き延びて幸せな一生を送ってくれと応援している自分に気が付いた。
ストーリーの中に経済楽屋、ヘミングウェイやスティーブンキングの小説、中国語の知識など作者のインテリジェンスの高さをうかがわせる。
人間が誰の支配も受けずに自分の意志で生活していきたいという願望はだれにも止められないし、人間はより強く規制しようとすればするほど自由への渇望が内側から湧いてくるものだとつくづく思った。
読み終えた後医大歴史ロマンを見ているようなそんな気がした作品だった。