曲がらない、曲げられない男たちが紡ぎだす入魂の和式メタル
1987年、バブル経済に沸く東京を遠く離れた青森県弘前市出身の和嶋慎二氏(ギター/ボーカル)と鈴木研一氏(ベース/ボーカル)によって生まれたメタル色の強いスリーピースバンド。
一口にメタルと言っても愛好家の中では実に多種多様に棲み分けがされているものの、人間椅子の初期からの大きな特徴となるのが津軽弁の響きが引き出す独特のリズム感や地元津軽を初めとする日本、特に東北地方の習俗や和嶋氏が追求するオカルトや仏教色の入り混じった世界観によって、どの曲を聴こうがすぐに人間椅子だと分かる点であり、「メタル」と言う括りに入れてしまうのが憚られるほど個性的な世界を繰り広げています。
人気オーディション番組で注目を浴び1990年にメジャーデビューを果たすも、1990年代当時の音楽潮流は彼らが追求するHR/HMの音作りとも独特の詩が紡ぎだす世界観ともかけ離れており、その後実力の高さは認められつつも売り上げ面では不遇の時代を長く過ごします。
中核メンバーである和嶋氏と鈴木氏は一貫してバンドのメンバーですが、ドラムのメンバーがその時々で入れ替わりそれぞれが特徴を生かしたプレーをしている事によって、曲調の根は変わらずとも表面的な曲調はドラマーの在籍時代によって特徴が違う曲もあり、聞き比べも楽しいものです。
2000年代末から再評価が進み、日本での新規ファンの獲得のみならず大規模フェスやYOUTUBEにおける「無情のスキャット」での高視聴数などによって海外での認知を爆発的に高めたことにより、2020年現在では高い認知度と評価に売り上げを得ています。
印象的な作品は多々ありますが、「りんごの泪」「死神の饗宴」「宇宙からの色」「黒猫」「幸福のねじ」「なまはげ」などに彼らの作品の特徴と時期による変遷が良く表れていると思います。