いつも何かと闘っている、歪んでいるけどスゴイ男
ぶっ飛んだ皮肉とユーモア、そして反骨精神に溢れるラッパーであり、とにかくインパクトがすごいと思います。
また、自身が主演を務めた半自伝映画『8 Mile』で語られたように、ハンデを乗り越えてのし上がってきたたくましさには、人々を惹きつけるものがあります。
この「8 Mile」は、予想を超えた感動作となり、エミネムファン、HIP HOPファンにウケるだけではなく、映画界からも高く評価されました。
ビッグアーティストとなり成功してからも、いつも何かと戦っているようなエミネムは、他のアーティストに対するディスも頻繁にされており、もはや名物となっている感があります。
しかし、一度ディスったことのあるリアーナと共演し、仲良くツアーを周るなど、あまり深い意味はないようで、面白いネタぐらいの感覚で見ていられます。
エミネムの曲の中には違和感を覚えるところがあり、それは自己愛の大きさです。
例えば、Didoの哀しげな歌声をフィーチャリングしたヒット曲「Stan」の内容は、自分の狂信的なストーカーとなってしまった男についてのストーリー。
また、まったく交際した経緯のない(と言われている)マライア・キャリーに対して、「俺の嫁になるのか?」と曲中でラップし、マライアに「Obsession」で反撃されています。
自分自身を讃えるラップはセルフボーストと呼ばれ、HIP HOPのジャンルの中ではよくあることなのに、なぜエミネムの場合は悪目立ちするのか?
それは、彼の自己愛が歪んでいるところにあるのではないかなと思います。
曲を聴いていても、ゴシップなどで入ってくる情報にしても、内面に大変なものを抱えているのだろうな?と予想できます。
とは言え、そんな歪んだ精神だって、ill、sick、などと、病んでいるほどヤバいと表現されるHIP HOPの世界ではアドバンテージをとる強みになります。
そして、その困難を抱え、常に闘い続けるエミネムだからこそ、同じように苦難を味わっている人々を力づけることができるのでしょう。