おやすみプンプン / Goodnight Punpun

おやすみプンプンとは、作者浅野いにおによる漫画作品。『週刊ヤングサンデー』(小学館)で2007年に連載を開始。その後同誌の休刊に伴い『ビッグコミックスピリッツ』で2008年から2013年まで連載された作品である。単行本は全13巻発売され2021年11月時点で累計発行部数は300万部を突破しており、第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品にも選出されていた。物語は主人公「プンプン」の11歳から18歳までの7年間の波乱万丈な半生を描いている。作品の特徴はプンプンやその家族はデフォルメされたひよこのような姿で描かれている点と、対照的にその他の人物や背景は緻密に描写されているギャップが挙げられる。またコラージュ的な手法や、ストーリーの進行とは無関係に人物の奇行を描いている場面から実験的なシュルレアリスム表現が随所に垣間見える。愛嬌のあるプンプンの姿とは裏腹に、物語は社会の中で起こり得るネガティブな出来事をリアルに表現している点も特徴だ。

omochi1のレビュー・評価・感想

おやすみプンプン / Goodnight Punpun
8

リアルでシュール、絶望も希望も感じる。ネガティブな人には特に刺さる漫画。

『おやすみプンプン』は浅野いにおによる漫画です。
この漫画は主人公プンプンの成長譚。
プンプンが子供時代を経て大人になり、色々な出来事を通して成長していく様子を描いたストーリーです。

この漫画は青年誌っぽい、リアルな人物描写や背景描写で構成されていますが、
主人公プンプンとその親戚だけが、子どもが落書きで描いたヒヨコのようなシンプルな外見で描かれており、
妙なインパクトを生んでいます。

可愛らしいプンプンの描写とは裏腹に、両親の暴力事件や離婚、
上手くいかない恋愛、母親の死亡と父親との決別、家への引きこもり、殺人、逃亡と、
ストーリーはどんどん重い方へ進んでいきます。

この漫画の素晴らしい点は、巧みな描写にあると考えています。
リアリズムに寄ったストーリーですが、
主人公プンプンの描写は基本的に落書きのタッチで極端にデフォルメされています。
そして、プンプンが話す言葉は基本的に吹き出しが使われず、黒いコマに白文字で描かれます。
このように、プンプンと他人を明らかに区別し、
読者がより感情移入しやすく作品の雰囲気に没頭しやすい描写がなされています。
重い展開と巧みな描写がマッチし、他の作品にはない読み味を感じることができる漫画になっています。

不思議な魅力がある漫画です。
鬱展開が多いため好き嫌いがわかれる作品ではありますが、
ネガティブな漫画が好きな人、ユニークな漫画表現に興味がある人には刺さる作品だと言えるでしょう。