極寒の地・アイスランドにて織りなされる物語
繊細かつ柔軟なタッチで独特な世界観を描く入江亜紀先生・作の「北北西に曇と往け」は、日本から遠く離れた島国・アイスランドを舞台として展開される不思議な魅力をもつ作品です。
主人公である御山 慧(みやま けい)は叔父の元で暮らしながら探偵として仕事を営み、人探しから物探しまで様々なことが彼の元へと舞い込みそれを解決していく…のですが、その解決方法が一味違います。もちろん従来の探偵のようにターゲットの張り込みをしたり身の回りのことを調べたりもするのですが、なんと慧は「物の声を聴くことができる」ためターゲットの持ち物に触れればある程度の情報を手に入れることができるんです。誰かが乗っていた車(もちろん自分の車も)や携帯、家の配線コードなどといった主に電気を通すものから聞こえるようなのですが、所有者が身近にそれを置けば置くほど情報が物へと記憶されていくので主人公はどんな情報でも読み取れてしまいます。ですが慧はそのことを家族にも同居する祖父にも話したとこがなく日本にいる親友にだけその秘密を打ち明けているのですが、どうやら慧の叔父も不思議な能力を持っているようでどうやらそれは彼らの血筋に関係しているようで…。
今のところは多く語られていない謎めいた部分であるためなんとも魅力的で引き込まれます。慧の探偵のお仕事や日常を軸にして物語は進むのですが、他にもアイスランドの広大な自然をピックアップした話や観光名所や特産品などのネタが随所に仕込まれ、プレートの話や間欠泉など地理に関する話が詳しく盛り込まれるためまるでツアーガイドさんの話を聞きながら観光しているような気分にさせてくれます。アイスランドは自然が多い為小さなコマの中でも背景にその自然が事細かにかかれていたり、かと思えば見開きで広大な大地が描かれたりととにかく「自然」に対する書き込みがえげつなく圧倒されるので一見の価値があります。異国の地で織りなされる物語に触れてみてはいかがですか?