シナリオが神掛かっている
週刊少年ジャンプの作品。主人公のゴンが父親を捜しに旅に出るところから話は始まる。王道かと思いきや、次々と予想だに出来ない展開が広がり、HUNTER×HUNTERの世界に呑まれてしまう。この世界観はどの漫画とも一線を画しており、ファンタジーでありながら、死や生、友情や勇気を深く追求したり、リアルな場面も多い。ダーク・ファンタジー、SF、バトル、少年漫画、この全てを完璧に備える漫画だ。キメラアント編には、愛に関する話もあり、張り詰めた戦闘の中で起きる、優しい一コマに涙してしまう。登場人物も多いが、全ての人物の名前を覚えて、台詞まで言えてしまう程に愛着が沸く。その秘密は誰もが長所だけでなく、短所や狡さを見せる背景にあるのだろう。そこに共感や反発を生み出し、読者の心を揺さぶる。この漫画は主人公であるゴンの一人称視点ではなく、キャラクター各々の視点となる場面が幾つかあり、筆者である富樫義博のトリックが刷り込まれている。それは登場人物それぞれの思惑であり、感情であり、何より、特筆すべきは膨大に張られた伏線である。後から読み、鳥肌が止まらない。キャラクターの名前まで、意味を見出すことができる。一度読めば、この感想の全てを理解する事ができるだろう。