卒業は終わりじゃない。
テレビシリーズから今作の劇場版まで、現代日本の女子高生の日常を映画にした珍しい作品です。
テレビシリーズのボーナスステージ的な扱いになるので、テレビシリーズ未視聴の方は見ておいたほうが本作を楽しめる事と思います。
「日常芝居というのは一番難しい」というのは演技の世界ではよく聞く話で、
本当の日常をアニメ作品、しかも映画作品にするのって、ものすごく技術の必要な事だと思います。
作中、本当に日常にありそうなさりげないワンカットからも唯達の息遣いを、生を感じます。
女子高生が主役のアニメはたくさんありますが、本作は特殊能力で俺TUEEEしたり、昼ドラのようなドロドロの恋愛をする等の派手なことは一切ありません。
どこまでいってもゆるくてぐだぐだ感のある、世界で一番有名な軽音部のちょっと特別な日常の話です。
盛り上がりに欠ける表現に聞こえるかもしれませんが、それが『けいおん』シリーズの良さであり、持ち味なのです。
「何言ってるかわからん」という方は是非一度見ていただきたいです。
そんな京都アニメーションの日常芝居が光る本作は、日本を飛び出して海外へ卒業旅行へ行く!という、ファンにはたまらないストーリーです。
正直、高校生が卒業旅行に海外!?とちょっとびっくりしました。
唯みたいなポーッとした子もいるし、国内旅行なら危険もないのでは!?と年齢のせいかついつい保護者目線で見てしまいます(笑)。
そして、この卒業旅行は別れの前兆でもあります。唯一の後輩メンバー・あずにゃんを残し、残りのメンバーは卒業を迎えてしまいます。
学生時代、なにかしらの部活をやっていた人なら一度は経験しているシチュエーションですが、
『けいおん』の世界でこういった話が出てくると、とてつもない寂しさがあります。
とはいえ、いつもの放課後ティータイムらしいぐだぐだ感は終始ずっと続いており、
ひとつのターニングポイントを迎えつつも、その先もずっと放課後ティータイムは放課後ティータイムでいられるような、
エンディングの先も何となく見える作品でした。
なんだかんだで卒業旅行から戻ったあともみんなでティータイムしているのかな、と思えてほんわかします。
未来に向かうのが不安な時に見たい映画です。