子供がエヴァに乗る理由
僕がエヴァンゲリオンを初めて観たのは90年代後半になる。かれこれ20年以上も前の話だ。
当時、エヴァはすでに社会現象になっていた。スクープという鳥越俊太郎が司会をしている報道番組でエヴァの特集をしていた。ルーズソックスを履いた女子高生の二人にエヴァを観てもらい感想を聞くというもの。予想に反して女子高生の反応は興味深かったのを今でも覚えている。女子高生の一人は感動して泣いていた。ひきこもっていた僕とは真逆の存在である彼女たちの言葉にとても惹かれるものがあったので、その夜、父の車で隣町のレンタルビデオ店に連れて行ってもらった。あるのは全部借りてきて、僕は朝方までエヴァの世界観に浸った。物語は特殊ではなかった。誰にでも起こりうる話。主人公の碇シンジ(14歳)はある日、父親のゲンドウに呼ばれて、突然エヴァに乗るように命じられる。地球を守るために攻めてきた使途と戦えというのだ。シンジの心境を考えれば、はっきり言ってムチャクチャである。この時点でエヴァは他のガンダムのようなロボットアニメとは大きく違う。シンジをはじめとするチルドレンたちは誰もエヴァに乗る本来の理由について理解していない。様々な葛藤を現在進行形で抱いている。誰かの見えない力によって自分は逃れられないポジティブに追い込まれてしまったのだ。碇シンジの抱いた『逃げちゃダメだ!』という感情は現代人には非常に普遍的なものである。今もなお。おそらくは女子高生の二人もそこに引き込まれたのではないだろうか。