パラサイト 半地下の家族 / Parasite (2019 film)

パラサイト 半地下の家族 / Parasite (2019 film)

『パラサイト 半地下の家族』は、2019年の韓国の映画。監督はポン・ジュノ、脚本はジュノとハン・ジンウォンが務め、ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダムらが出演する。
第72回カンヌ国際映画祭では最高賞パルム・ドールの受賞を果たし、韓国映画として初の同賞受賞という歴史的快挙を成し遂げた。第92回アカデミー賞では作品賞を含む6部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の最多4部門を受賞した。非英語作品の作品賞受賞は史上初めてのことである。また、アカデミー作品賞とカンヌの最高賞を同時に受賞した作品は1955年の『マーティ』以来、65年ぶりとなった。
半地下住宅で暮らすキム一家と、高台の豪邸で暮らすパク一家。この相反する2つの家族の出会いから始まる物語を、世界が直面している貧富格差への痛烈な批判をも内包した、超一級のエンターテインメントとして描かれている。

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パラサイト 半地下の家族 / Parasite (2019 film)
10

誰の立場に立っても共感できる珠玉の一作

話の大まかな内容だけ前情報として聞いていましたが、予想以上に面白い作品でした。
タイトルでも話しているように誰の立場に立っても共感できるという映画。この一言に尽きます。
主人公家族は所謂「底辺」と言える様な家族に対して、パラサイト先となるお家は絵に描いたような「セレブ」。同じ地域に暮らしているとは思えない雲泥の差の家族です。
主人公家族はお金が無いこともあって、生活に余裕がなくも仲良く幸せに暮らしているという印象を受ける家族でした。
セレブ家族の方は仲良く幸せなのはもちろんのこと、裕福なので何でも持っています。
大きな家、高級外車を複数台、何よりご主人も奥様も大変美しくて本当にいい人なのです。嫌味もなくて本当に「恵まれた人」だということが細部で表現されていました。
主人公家族はもしかしたら、このセレブ家族に出会っていなければ今も楽しく仲良く過ごせていたのかもしれません。
しかし、人間は一緒にいる相手と自分をどうしても比べてしまう生き物です。
最初は主人公家族全員もセレブ家族のことを天上人の如く思って自分たちと比べようともしていませんでしたが、徐々に自分たちと彼らの差などを感じ始めている様に思いました。その結果、使用人として彼らから養分を根こそぎ吸い取るには、人間としての最後の「矜持」が邪魔したのだろうなと劇中起こる惨劇のシーンで思いました。いや、人間として生きるのに必死だったために起こった結果と言えるかもしれない。
また、韓国映画らしく救いのないなんとも後味が悪い形で終わるのですが、イヤミス好きの私としてはあの終わり方も良かったです。
日本よりも遅くに資本主義的社会体制が組み込まれたにもかかわらず、今や日本に負けない経済成長を遂げている韓国。その突然の資本主義の波についていけない人が多く、格差が日本の比ではないと聞きます。
超学歴社会なので大学に行って学びたい、でも教育にかけてあげるお金が無くて進学も予備校にも行けない兄妹や、仕事が無いから仕方なく自営業を始めたが失業して今の生活に落ち着いたお父さんは、監督から今の韓国の超格差社会への皮肉だと読み取れました。
そういう背景を考えて、主人公家族の立場で見てみると共感できる点は劇中多分にありました。
対して、セレブ家族の立場で見てみても共感できることがたくさんありました。
恵まれているからといって努力しなければ、あそこまでの資産は形成できないはずです。彼らはセレブになるべくしてなったのです。
恵まれているからこそ恵まれていない人に親切に、恵まれているからこそ差別をせずに使用人にも丁寧に接する。
このセレブ家族の立場で考えれば、主人公家族への接し方はあれ以上のものはないと感じます。
しかしふとしたところで「差別」ではなく彼らは「区別」をします。
でも、これって第三者の目線から見れば区別をすることは当たり前なんですよね。しかし主人公家族には「差別」や「見下し」に感じたと思うと、なんだかやりきれない気持ちになりました。
何回見ても見方が変わる面白い映画です。
是非一度見てほしい一作です。