どろろ

どろろ

『どろろ』とは手塚治虫によって描かれた、戦国時代を舞台に奪われた自身の身体を取り戻すべく48の魔物を追う百鬼丸と、泥棒の少年どろろの旅を描く時代劇漫画である。1967年から1968年までは『週刊少年サンデー』に、1969年には『冒険王』で連載された。父親の野望によって、48の妖怪に身体を奪われた姿で誕生した百鬼丸。医者・寿海に助けられた彼は身体を取り戻すため妖怪退治の旅を続けていたある時、泥棒少年どろろと出会う。手塚オリジナルの妖怪が多数描かれており、カルト的なファンも多い。

7ehisa11567のレビュー・評価・感想

どろろ
10

怒涛のアクションと丁寧な背景・心理描写

手塚治虫の有名な作品が、2019年放映版アニメとして目にも止まらぬアクションと美しい絵柄で刷新されています。主人公百鬼丸は第1話では、義手義足にお面を装着していて、耳も目も口もきけません。独自の視界で敵を見分け腕に仕込んだ刃物で対峙し、その妖怪(鬼神)が百鬼丸の一部を奪った者であれば百鬼丸はそのパーツを取り戻します。父である一国の領主との約定で12の鬼神から身体を奪われた百鬼丸が、旅で徐々にパーツを取り戻すのですが、生身に近づくたびに心も身体も傷ついてゆきます。顔が戻れば肌は傷つき、耳が戻れば人の悲しむ声が聞こえ、自分の出生の真実を知ってしまいます。そうして一つひとつを傷つきながら取り戻し、拙いながら言葉を発し「人間とは」と問うようになる成長は原作にはなかった部分でとても丁寧に描かれ新鮮であり、観ていて主人公の言動に夢中になります。室町時代のどこまでも貧しい世界観は旅の途中で出会う人々の暮らしぶり、住まいの中にも窺い知れ、かなり暗い色合で描かれるのですが、またその暗さの中で動き回るどろろと百鬼丸が「自分の力で勝ち取る」というテーマはとてもポジティブです。百鬼丸の弟であり次期領主である多宝丸やその従者二人、鬼神と共生した道を選ぶキャラクター達、皆物理的精神的に欠けている部分がありつつ愛も持っていて、魅力的で24話あっという間に完走できます。
特に18話からは美しい日本風景で怒涛のアクションの連続、登場人物たちがそれぞれに動きだし狂っていく様は最後の展開が全く想像できず心臓がバクバクしました。
百鬼丸は舞台俳優が、どろろを子役の女の子が声を当てたりと、アニメ声が苦手な方にもお勧めできます。