至福の絶望
凄まじい人気で、実写映画化までされた「進撃の巨人」。その漫画版のレビューをしていく。
タイトルにもあるように、とにかくこの作品は「絶望しかない。絶体絶命。もうダメ?」っていう状況が多い。
それも陳腐なものではなく、ついさっきまで明日への希望を持って楽しそうに喋っていたキャラクターが、一瞬で「ただの肉塊」と化す、ゾクゾクくるようなシーンが。
そして主人公達もそんな危機的状況を乗り越えていくわけだが、簡単に乗り越えられるわけではなく、深い傷を負ったり、首をはねられたり、それでもどうにかして乗り越える。
そこにはリアリティーがあり、それに読者は惹きつけられる。
タイトルの意味は、リアリティーのある絶望シーンが、この作品の魅力だということだ。
この作品は王道系の少年バトル漫画とは違い、「勝利」とか「幸福」とかに重きを置いていない。
「絶望感」とか「深い悲しみ」の方に重きを置いているのだ。
それが他の作品と一味違うところであり、この作品が爆発的人気を得たわけだと思う。
漫画において最も大切なのはキャラクターが魅力的かどうかだと、ある先生が言っていたが、この作品はそれを十分に満たしていると言える。
読者が共感出来るような、心の暗い部分を持っているキャラクター。
その弱さを乗り越えさせてくれるのは、深い絆で結ばれた親友だ。
ただ、王道系少年漫画とは違い、軽々と「仲間」とか「友達」という言葉を使わない。
それはリアリティーを生み出し、より作品の世界に引き込まれる。
とにかく、グロテスクな表現などもあるが、大人なら一度読んでみることをお勧めする。