温かな優しさに包まれる
何で彼らはこんなにも、誰かのためを思えるんだろうというくらい、主人公の透を中心に登場人物達の優しさについて考えさせられる作品です。
出てくるキャラクター達はみんなそれぞれに苦しさや葛藤を抱えています。
その中でも透が居候することになる草摩家の人々は、普通ではありえない呪いとも呼べる体質を持っており、そのせいで彼らは周囲の人々から疎まれたり、存在すら否定されるほどの酷い言葉を浴びせられたりなど、辛い体験をしてきました。
けれどこの作品はそんな悲しい過去を背負った彼らが、透という存在を通して自己を見つめ、暗く重い呪いを負った自身をありのまま認めながら、それぞれが生きていく意味を模索して見つけ出していきます。
呪いという非日常なニュアンスが出てきますが、その呪いと向き合う過程に対しては特別な力が働く訳ではなく、ただ人と人との関わりによって暗闇だった道筋が明るく照らされていくのです。
その光を作るものはふとした思いやりだったり、勇気を出した行動だったりと、キャラクター達の優しさの積み重ねです。
その積み重ねがどれも心に温かさを運んでくれます。
作品に触れていくうちにその優しさの繋がりがこちらにも染み入ってくるようで、誰かを思う大切さを思い出させてくれる素敵な物語です。