プラネテス / ΠΛΑΝΗΤΕΣ / PLANETES

プラネテス / ΠΛΑΝΗΤΕΣ / PLANETES

漫画家幸村誠による漫画、谷口悟朗監督によってアニメ化された。現代よりも宇宙開発が進んだ世界観の中で宇宙の掃除屋として働く主人公、星野 八郎太(通称「ハチマキ」)がさまざまな試練や障害に遭遇しながらも仲間たちの助けを借りながら乗り越え、宇宙飛行士として成長していく物語である。

kakusei8931のレビュー・評価・感想

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プラネテス / ΠΛΑΝΗΤΕΣ / PLANETES
10

愛し合うことだけはやめられないんだ

『プラネテス』(講談社)は『ヴィンランド・サガ』の作者でもある幸村誠原作のマンガで、NHKでもアニメ化された作品である。
時代は2070年、人類は宇宙開発を進め、月に新たな燃料資源を発見し、宇宙での生活が当たり前になりだした時代だ。
この物語には魅力的な登場人物がたくさんいるが、中心は「ハチマキ」と「タナベ」である。
まずは主人公の星野八郎太、通称「ハチマキ」は宇宙ゴミ(デブリ)を回収する仕事についていた。夢は自分の宇宙船を持つこと。お金を貯めて宇宙船を購入することを目標にしていたが、デブリ回収の仕事は危険を伴い、そこまで賃金も高くなく、宇宙船を購入するという夢を叶えるには無理のある仕事だった。
ある日のデブリ回収の仕事の際、ハチマキは事故に巻き込まれ宇宙空間を一人さまよう。なんとか救助され体には問題はなかったが、広大な宇宙空間に一人置き去りにされた恐怖から「空間喪失病」という心の病を負ってしまう。もう宇宙には出られないのか、と絶望しかけていた時に、同僚のフィー・カーマイケルとユーリ・ミハイロコフに連れられ、製作中の宇宙船のエンジンを見せてもらう。それは未だ人類未踏の星、木星まで向かうために造られている「惑星往還船フォン・ブラウン」という船のものだった。
ハチマキは、そのエンジンの大きさに圧倒されそこから何かを感じ、空間喪失病も克服し、自分の船を持つという漠然とした目標から、フォン・ブラウンの乗組員になるという明確な目標に向かっていくことになる。
そして、もう一人の主人公と言ってもいい田名部愛、通称「タナベ」。彼女は、ハチマキの所属するデブリ回収屋に新入社員としてやってきた。彼女がよく口にする言葉が「愛」である。彼女の価値観には愛の有無がある。
作中、ハチマキが人は一人で生きていく事を強く主張するが、その度にタナベは人間には愛があること、愛はすべてを包み込みとてつもない力をくれることを力説する。そんな彼女の存在が少しずつハチマキは、心のどこかにひっかかるようになっていく。

この物語は舞台は2070年の宇宙という「未来」の設定だが、登場人物たちの悩みは「夢と現実」「戦争と貧困」などであり、今を生きる私たちとなんの変わりもないものなのだ。そんな未来でも変わらないもの、この作品を通して伝えたいと思われること、それが「愛し合うことだけはやめられないんだ」ということ。宇宙は広く一人だけでは生きていけない。人とのつながりを絶ってしまえば迷子になってしまう。そんな悩み、を魅力的な登場人物たちが抱えて、苦悩・葛藤し答えを出していくのだ。その様子が愛おしく、勇気づけられるものがある。もちろん人間の感情はきれいなものだけではない。その感情の明暗もこの作品のおすすめポイントだ。

マンガ版とアニメ版で作品の大筋は同じだが、アニメはオリジナルキャラを動員し、少し違う展開をする。
アニメの方は、出演声優が実力派ばかりなので演技にも魅せられる。2016年にお亡くなりになられた田中一成さんが、主人公のハチマキを力強く演じられているので見ていただきたい。
マンガとアニメ、どちらから入っても問題はないのでぜひ両方を見て、「愛」について感じてもらいたい。