この世界の片隅に / In This Corner of the World

『この世界の片隅に』(このせかいのかたすみに)は、こうの史代原作のコミックをアニメ化した映画である。2007年~2009年まで『漫画アクション』に連載され、2011年にはテレビドラマ化もされた。2016年、片渕須直監督による同名の劇場アニメ映画が全国公開されたが、クラウドファンディングで39,121,920円の制作資金を集めたことでも話題になった。本作品は戦時中の広島県呉市が舞台である。絵を描くことが好きな少女すずがある一家に嫁ぎ、戦火の激しくなる中で懸命に生きる姿を追いかけている。主人公のすずが周作と出会い、翌年2月に2人が祝言を挙げるところからストーリーは始まる。結婚するまで絵ばかり描いていたすずは、一転して一家を支える主婦になった。家族は毎日の食卓に創意工夫を凝らして、食糧難を乗り越える。そんな日常が丁寧に描かれており、何気ない毎日の大切さを痛感させられる。やがて戦争は激しくなり、日本海軍の要となっている呉はアメリカ軍によるすさまじい空襲にさらされる。数多くの軍艦が燃え上がり、町並みも破壊され、ついに1945年8月を迎える。戦争によって市井の生活が壊されていく恐ろしさが、長く深く人々の心に残る作品である。公開後、15週連続で興行ランキングトップ10入りし、第40回日本アカデミー賞で最優秀アニメーション作品賞を受賞した。

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この世界の片隅に / In This Corner of the World
10

圧倒的に”のん”

とにかく圧倒的に”のん”の声が魅力的でキャラクターにマッチしている!物語は戦時下の広島。広島市内から呉に嫁いだ少女「すず」のおはなし。
日記帳で進んで行くストーリーは、普通であれば飽きてきてしまうもの。しかし、この作品では「すず」のおっとりしたキャラクターの可愛らしさと声優のんの”演技力”がその飽きを全く感じさせない。それどころか、ストーリーが進むにつれて、彼女が日々やらかしてしまうドジになぜか惹かれてしまう。
しかし、物語中盤で主人公の女性すずが途中で不発弾により片手を失うシーンでは、なんとも言えない悲しさと苦しさが湧いてくる。絵を描くことが小さい頃からの生きがいだった彼女にとって、手を失うことは人生の意義の大部分を奪われてしまうことを意味していた。戦争とはこうも無慈悲で残酷なものだったのだと、改めて感じさせられる場面だ。
さらに、それまで気丈にに振舞っていたすずも戦争の状況が悪化するにつれて、だんだんと変わっていってしまう。それでも、原爆が投下されたのち最後には”普通”の生活が再び戻ってくるところに、戦時下であっても普通の暮らしがこのように展開されていたんだとまざまざと見せつけられる良作。漫画を原作としているものの、漫画にはない呉や広島の詳細な描写がとても美しい!漫画版から、いくつかカットされているシーンもあるので、ぜひ漫画と合わせて拝見してもらいたい!