小沢健二さん、さようなら
2010年に再開した小沢健二の音楽活動は、全く心が踊らないものだった。
東大卒を前面に押し出してロリポップソニック/フリッパーズギターで、小山田圭吾と日本のポップシーンを翻弄した後の王子様キャラのソロ活動は見事な転身だった。
決して歌がうまいわけでなく、声質がいいわけでもない。それでも熱狂的なファンがいたのは、小沢健二がアコースティックで探り合う人間関係を否定して高らかにラブソングを歌ったからだ。気恥ずかしくなるような「愛してる」「君を僕が奪い取る」という歌詞を、恥ずかしげもなくトーク番組でも口にした。3枚目の「球体の奏でる音楽」は明らかにスピリチュアル系の歌詞のアルバムで、シンプルな音源だから小沢健二の歌唱力のなさが際立った。声は伸びない・声量はない・音階は狭い。雰囲気でごまかされていた小沢健二の歌声が露呈した。
十数年の活動休止からの復活で、さらに小沢健二の歌唱力が落ちているのが明らかになった。
年齢でさらに狭くなった音域。自分の歌すら歌うのが苦しそうな佇まい。見た目はそれほど変わりなくても、歌うと老いが際立っていた。
アメリカに生活拠点を置いているならアメリカで音楽活動を再開すればよかった。曲の量産ができないなら、音楽にこだわらず他の活動を続けていれば別のファンが獲得できたのではないだろうか。