舞台で活躍する宝塚OGたち
華やかなショーと、全員が女性であるからこそできる丁寧で繊細な芝居が魅力の宝塚歌劇団。
退団後も、ミュージカルやストレートプレイで活躍を続ける彼女たちの魅力に迫ります。
舞台で輝く宝塚OGたち
退団後も舞台を活動の中心としているOGはたくさんいます。宝塚時代から生の舞台での経験を積み、その難しさ、魅力を熟知している彼女たちにとって、舞台は特別な場所であると言えるでしょう。
一路真輝や涼風真世、香寿たつきなど、現役時代から歌唱力に定評があった元男役トップスターをはじめ、元娘役の大ベテランである初風諄、そして花總まりや和音美桜など数多くのOGがミュージカルの世界で活躍しています。彼女たちは、ヒロインや脇役だけでなく、タイトルロールも見事に演じ、宝塚時代からさらに進化を続けています。
また、ミュージカルだけでなく、ストレートプレイのような歌唱のない芝居に出演しているOGも多く、宝塚時代よりさらに磨き上げられたパフォーマンスを我々に届けてくれます。
最近では、宝塚OGによる「CHICAGO」が本場ニューヨークでも好評を博すなど、彼女たちのパフォーマンスの輝きはさらに増しています。男役OGが妖艶な女性を演じる姿は、宝塚時代からは想像もつきませんが、変わらぬダンスパフォーマンスや歌声は、昔からのファンにとっても嬉しい見所です。
一方、ミュージカルでは、宝塚とは歌唱のキーが異なることも多く、独特な裏声歌唱を得意とする娘役よりも男役の方が適応しやすいと言われがちでした。しかし、努力と持ち前の華やかさでそのハンデを克復した娘役OGの活躍からも目が離せません。
宝塚の現役生のファンの方も、自分の応援しているスターの将来と重ねて、OGの活躍をみると、宝塚の魅力がよりわかるのではないでしょうか。
ミュージカル「エリザベート」
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上記の花總まり主演の人気ミュージカル「エリザベート」。
花總とWキャストの蘭乃はなも宝塚OGであり、上記の涼風真世、香寿たつきも出演する。他にも宝塚OGが多く出演している作品。
東宝版初演では、上記の一路真輝が主演を務めていた。
ブロードウェイミュージカル「CHICAGO」
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宝塚OGが集結して作られ、世界初全員女性での上演となった。
本場ニューヨークでも好評を博した名作。
OGが数多く出演するミュージカル「エリザベート」
特に、彼女たちのミュージカルでの輝きは際立っています。
自身の退団公演で、日本初演の「エリザベート」を成功させた一路真輝は、退団後、東宝版「エリザベート」の初演で、タイトルロールであるエリザベート役を演じ、話題となりました。彼女はこの難役を2006年まで、シングルキャストで演じきり、今でも彼女のエリザベートはファンから愛され続けています。
その後、「エリザベート」のタイトルロールはすべて宝塚OGが引き継ぎ、演じています。
一路から同役をバトンタッチされたのは、涼風真世と朝海ひかるでした。他にも、春野寿美礼や、宝塚時代に男役でありながらエリザベート役を演じた経験のある瀬奈じゅんが演じました。
2015年から演出とキャストが一新され、宝塚時代に初演も含め二度エリザベート役を演じた花總まりと、退団公演でエリザベート役を演じた蘭乃はなが演じています。
これまで男役OGが演じてきた同役を娘役OGが演じること、また、日本初演で同役を演じた花總が再び同役に挑むということで、今まで以上に注目されています。
新キャストには、初演時に皇太子ルドルフ役で出演した香寿たつき、初演時に若手でありながらエーヤンの歌手を任された未来優希が参加しており、2016年からは、エリザベート役を演じたことのある涼風真世もそこに加わっています。
他にも名前を挙げきれないほど、この作品にはたくさんのOGが出演してきました。
「エリザベート」という作品は日本初演が宝塚歌劇団で行われたということもあり、OGにとっても、ファンにとっても大切な作品となっています。
OG出演の他のミュージカル作品
ミュージカル「レディ・ベス」
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ミュージカル「モーツァルト!」
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ロックミュージカル「1789 バスティーユの恋人たち」
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ミュージカル「王家の紋章」
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「エリザベート」だけでなく、OGが活躍しているミュージカル作品は他にも数多くあります。
エリザベート役でミュージカル界での存在感を示した一路真輝は「アンナ・カレーニナ」で年下の男との不倫により堕ちていく人妻を、持ち前の歌唱力と演技力で見事に演じました。「モーツァルト!」では物語のキーマンともいえるヴァルトシュテッテン男爵夫人を演じ、ベテランである彼女の包み込むような歌声に多くの人が感動しました。
涼風真世は「マリー・アントワネット」、「レベッカ」などに出演していました。宝塚OGの中でも定評のある歌唱力で、近年はヒロインだけでなく、ヒロインの脇を固めるベテランとして、活躍しています。
「モーツァルト!」では、一路と同役を演じたこともあります。また、この役は香寿たつきや春野寿美礼も演じており、宝塚OGならではのオーラをまとった彼女たちの演技は、それぞれ愛されています。
娘役OGとしての活躍が際立っているのは、花總まりです。彼女は一時期舞台を離れていましたが、復帰後は精力的にミュージカル作品に出演しています。
「モンテ・クリスト伯」や「モーツァルト!」の他、再演が決定している「レディ・ベス」など、脇役からタイトルロールまで様々です。彼女の場合、もともと娘役だったこともあり、歌唱力だけでみると、一路や涼風ほどの定評があったわけではありませんが、娘役ならではの華や持ち前の演技力、そして努力により、まばゆい輝きを放っています。
また、若いOGも活躍し始めています。
夢咲ねねは退団後、ロックミュージカル「1789」のヒロインを演じました。また、彼女の妹である愛加あゆも「王家の紋章」で存在感を示しており、今後、もっとたくさんの作品に出演し、実力をつけていくことが期待されています。
宝塚歌劇団とは異なり、外部のミュージカル作品の映像化は一般的ではありません。そのため、彼女たちの舞台を観るには劇場に行かなくてはなりません。
しかし、近年は観客の強い要望や版権の都合等によって、音源化だけでなく、映像化される作品も稀にあります。2014年版「モーツァルト!」(既に発売)、2016年版「エリザベート」(12月頃発売予定)は映像が商品として残る貴重な作品ですので、なかなか観劇ができない方もぜひ手に取ってみてください。
ミュージカルだけじゃない!OG出演のストレートプレイ作品
「扉の向こう側」
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ミュージカルだけでなく、歌のないストレートプレイに挑むOGも多くいます。
壮一帆主演の「扉の向こう側」には、一路真輝、紺野まひるが出演します。この作品は歌が全くなく、台詞を中心とした演劇です。宝塚でもミュージカル作品以外のお芝居は多くありますが、全く歌わないというものはほとんど存在しないため、OGにとっては挑戦であるといえます。
大地真央も数多くの舞台に出演しており、台詞だけの演劇にも果敢にチャレンジしています。
宝塚OGは退団後も、自らの芸に磨きをかけ、挑戦を続けているのです。
宝塚の現役生のファンである方にも、宝塚は恵まれた素晴らしい場所であり、OGたちは宝塚での経験を武器に、さらなる進化を続けていることをもっと知ってほしいと思っています。
外部の舞台でも、宝塚で培われた芸は大切な宝物です。今後も、宝塚とそのOGを愛するファンとして、彼女たちの活躍を願っています。