止まらない漫画の進化、その一体系!?『坂本ですが』
漫画界、アニメ界がどんどんと進化している、と何故か思いました。いわゆる「シュール系」の進化の一つではないでしょうか、この作品。
坂本君
聖イノセンス学園(という中学らしいですが、彼に絡んだ不良生徒は知らない模様)出身の高校生で、イケメンで超人です。不良のいじめも何もかも、芸術的なまでに華麗に対処しちゃいます。
定番をどう覆すか?
教室の出入り口に黒板を挟むという定番のいたずらも…。
彼にかかると無駄にスタイリッシュ。女子が何でキャーキャー騒いでるのか理解できそうでできなさそうですが、ここは一緒に拍手しておきましょう。トイレの個室上部からに水をぶっかけるいたずらだって御覧の通り。「その傘いつから、どうやって…」考えても答えは出そうにありませんので考えないほうがよろしいかと。
かようないたずら、嫌がらせを彼は信じがたいほど華麗に、かつ時に大胆な発想と方法で切り抜けてしまうのです。「作者の頭を覗いてみたい」作品数あれど、なんだか「今までになかった」という言葉が浮かんできます、この作品。
坂本君の手にかかればあっという間に優雅なる道具に早変わりしてしまいます。キラキラした漫符(漫画でよくある表現など)だって全然嫌味じゃありません。そう、スタイリッシュなのに嫌味じゃないんです、この作品。定番のもの、日常的なもの、よくあるものをこれでもかとスタイリッシュ、大仰にしてもなお、嫌みさは残らず。最後には拍手と感動が残るという。
事実、作中でも「いじめたる…」となっていた不良生徒、「こいつのせいで目立てない」と逆恨みしていた生徒共々「陥落」していました。自身に向けられた恨みさえも称賛に変える男、坂本。対して、先の二者たちが哀れに見えるかというとそうでもなく。むしろかわいいとすら思えてしまうんですよね。応援したくなるというか。いや、いじめとかは応援しませんけども。「まっとうにがんばれよ!」といった意味合いで。
ちなみにこちらは、窓辺に腰かけて優雅に自習…ではなく、不良生徒によって椅子と机を捨てられた後。回収するでもなく窓に座って普通に授業受けるって普通の心臓じゃできませんわ。
ハチとコンパス、という時点で、コンパスの針を刺して殺すのかと思いましたが、そうはいかないのがこの男です。クラス中大騒ぎになっているのに、一人黙々と課題を解く余裕。そして、ハチと渡り合い、しかる後逃がす。優しいというか、「戦いあった者同士のよしみ」なんじゃないかと勘ぐってしまいます。実際優しいんでしょうけども。
これは進化か?
この作品が漫画界における究極進化の一つなのかは分かりませんが、新たな風を入れたのは確かかと。決して慌てない優雅さプラス超人。それがうまく合わさり(作り手が計算しているとはいえ)出来上がったのが『坂本ですが』ではないでしょうか。