その漫画家とは、山田花子さん。
1967年6月10日生まれ、1992年5月24日没。若干24歳の若さでした。
(お笑い芸人・山田花子さんとは別人です)
幼少期からいじめを受けており、その不条理さをマンガに吐き出したことでカルト的人気を誇りました。
『魂のアソコ』『花咲ける孤独』『神の悪フザケ』『自殺直前日記』など、発表作品のどれにも作者の実体験と思われる描写が散りばめられています。
山田さんは中学三年生のときにデビュー、高校1年生には「なかよしデラックス」での連載、20歳の頃には「ヤングマガジン」で連載という漫画家として非常に理想的な階段を登っていったのでした。
山田花子さんのマンガの特徴は、学校生活を中心とした閉鎖的な空間で起こるあれこれ。
観察眼がするどい山田さんは、それらを丁寧に書き出し、マンガのコマ外に非常に細かな「注釈」をつけるという特徴がありました。
例えば……
・教室内の風景が描かれたコマに添えられた一言
「女子は、ないしょ話ばっかりしている。」
・学校の先生が教壇に立っているシーンに添えられた一言
「活発な子がすきな先生。」
・机を蹴っ飛ばしたときに散らばったものに対して添えられた一言
「三ヶ月、机に入っていた、くさった牛乳。(ヨーグルト化している。)(チーズ化することも有る。)」
・男子生徒の横顔が書き込まれたコマに添えられた一言
「男にだって、ぼくは生えてる。忘れないでよ。(まつ毛より。)」
・保健室に連れて行かれる男子生徒のコマに添えられた一言
「ゲロ吐いた弱い男子は、翌日、学校を休む。」
・OLが同僚に「純子ちゅわん!」と声をかけるシーンに添えられた一言
「自分のノリで、勝手にへんな呼び方する。(よしてくれ)」
このように、山田花子さんの作品にはほんの些細なコマにも、執拗なほどの説明が添えられています。
「あるあるネタ」としてニヤニヤ楽しめる着眼点ばかりですが、時には詳細すぎて驚かされてしまいます。
今現在「生きづらさ」を覚えている人からすれば、「あるある」を超えて強い共感を呼ぶ存在になるかもしれません。