他者の目になって見えたモノは?「入れ替わり」系の物語たち

ふとした弾みで、体が入れ替わった。ばれないように取り繕うさまは滑稽でもあるし、応援したくもなる。とは言え、当人たちはそれなりに何かを学んだご様子。これは神様のいたずらなのか、それとも思し召し…?

『おれがあいつであいつがおれで』

入れ替わる二人:斉藤一夫と斉藤一美
二人の関係:幼稚園で一緒だった幼馴染
入れ替わったきっかけ:体当たり?(いわくつきの場所だったもので)

物語は一夫の一人称で進みます。小学校6年生の男の子。ラジコン関係以外特に取り柄がないと思っている、平均的な子です。6年生に上がったばかりの頃、転校してきた一美に悪気なく恥ずかしい過去を暴露されるわ、それとは別の嫌な過去を思い出すわ、精神的に振り回されます。たまたま立ち寄った住宅地に一美の家があり、「遊びに来てくれたの?」と迎えに来たところで、体当たり。入れ替わってしまうのです。

いきなり「他人」になってしまった二人は、周囲の反応から「入れ替わったことは内緒にしておいた方がいい」と、なるべく「当人らしく」振る舞おうとするのですが、急に男の子になってしまったことなどで、一美は徐々に元気を失っていきます。一夫は一夫で、食事の作法、おしゃれや清潔さを求められる生活、不慣れな家事の手伝いの中で「女の子ってめんどくさい」なんて思ったりするわけです。

服の着方、髪のとかし方を「伝授」するシーンがありました。

少々エッチな部分もありますが、それはある意味この作品のテーマともいえるかと。何せ思春期入りたての小学6年生。そんな中異性に変わったことで二人は視点までも変わっていきます。ことに、一美。前の学校で好きだった男の子に対する意識が変わり、一夫も一美もそれぞれの「体」に心まで取り込まれたかのような行動をとるシーンがありました。それでも自分を保っていたんです。「戻れないかもしれない」と思いながら。ラスト部分は、ある種の儀式にも思えました。

『放課後』

入れ替わる二人:高本浩平(いしだ壱成)と秋山あずさ(観月ありさ)
二人の関係:同じ高校に通うヤンキーと優等生
入れ替わったきっかけ:電気ショック

観月ありさが「ヤンキーな姉ちゃん」にしか見えなかった…。

『おれがあいつで』を原案にしています。同じ学校に通っているものの、何の接点もなかったお嬢様と、バンド活動をしているちょいヤンキーな少年。工事中の電線のそばを通りがかった際に感電し、入れ替わります。二人とも急ぎの「用事」があったので、鏡見るまで気づきませんでした。

先に言っておきます。入れ替わった「後」です。

いしだ壱成の「オネエ演技」が眩しいほどに光っていました。入れ替わり後、バンド活動やテストなどを通し、互いの「いい面」を知っていきます。ちなみに観月ありさ演じるあずさはピアノをやっているからとキーボードを半ば強制的にやらされるのですが、「こいつに合わせてみよう」というフォローにより、スローテンポでも「いい曲」ができたり…。

『パパとムスメの七日間』

入れ替わる二人:川原恭一郎(舘ヒロシ)と川原小梅(新垣結衣)
二人の関係:親子
入れ替わったきっかけ:事故、という認識だったが…?

入浴時「パパに見られたくない」と女子高生の口調で言う舘ヒロシ…。

女子高生とその父親が入れ替わりました。原作は五十嵐貴久さんです。世代間ギャップによる価値観の違い、またムスメの反抗期などから疎遠になっていた親子。交通事故からムスメを庇ったことで、親子は入れ替わります。ムスメは女子高生の感性で会社の危機を救い、パパは世慣れた大人として時に情緒不安定になるムスメをなだめたり、「ご褒美だから」と憮然としながらも、履きなれないヒールでおしゃれして「デート」に行ったり。

他人の体で生活するというのは至難の業、とまではいかずともかなり大変なことと思います。それでもめげず、今まで気づきもしなかったこと、考えもしなかったことが見えてきたということは、「創作物」だからと言うことを抜きにしても、意味のある減少だったんでしょう。入れ替わり特集でした。

えどまち
えどまち
@edono78

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