ドイツミステリーをここから!
昨今ドイツミステリーが熱くなっているようです。にも関わらず邦訳されているのが少なすぎてどれがいいやら…まずはこちらの作品群から入ってみませんか?
犯罪
全編とおして語られるのは「犯罪」であり、人の精神が軋んでいく音が聞こえ
てくるような話もあれば、ごくふつうの人が犯罪を犯す、そのスイッチが入っ
た瞬間に立ち会ってしまったような薄ら寒いものもある。
一編20ページぐらいなのだが、この衝撃はすさまじいものがある。
出典: www.amazon.co.jp
著者が実体験で遭遇したのであろう様々な犯罪者が登場人物のモティーフになっていると思われますが、読んでいて人間存在の深淵というか怖さ(あるいは素晴らしさ)を垣間見させてくれる一書です。著者は法律家(弁護士)の由ですが、お堅い起訴状ないしは判決文を想起させる短文形式の事実・心理描写のシークエンスでこのような物語を紡ぎ出せるというのは、一つの発見でした(文体の勝利!)。また、所々に記される刑事司法に関する鋭い警句も一読に値します。
出典: www.amazon.co.jp
漆黒の森
ストーリの背景におどろおどろしさを持たせつつも、警察の鑑識技術、科学捜査について、緻密に描かれており、調査、分析結果によって、捜査陣が事件の真相に近づいていくさまは大変説得力がありました。
事件の真相を追う主人公の男女2人、女性記者のハンナ・ブロックと「フライブルク刑事警察首席警部」のモーリッツ、操作の本流とマスコミという相容れるのが難しい立場での、捜査情報の駆け引き、そして、男女関係の駆け引き、ジレンマが、この主人公2人も本作に大きな魅力を加えていたと思います。
出典: www.amazon.co.jp
いかにもドイツらしい重苦しい陰惨な連続殺人事件。さすがはグリムの残酷童話の故郷である。しかも、主人公の片方の女性編集者は頑固で意固地で、思い込んだらテコでも動かない、ドイツ女性の典型。メルケル首相を思い浮かべてしまったほど。グロテスクな事件を伝説に絡ませて起こすミステリの常道とも言えるデビュー作。事件よりもコワイ人間関係。楽しめるが、この主人公二人がカップルになることを想像すると、ますます怖くなる。
出典: www.amazon.co.jp
首斬り人の娘
本書の記述は、スピーディでアクションもサスペンスも豊富で、さらに意外性も忘れてはいない。それに、忘れてはいけないことは、登場人物のキャラクターが皆イキイキとしてることで、これは読者にも楽しい。とくに医術に長けた大男・処刑吏クィズルの活躍には胸がすくし、かれの利発な娘マクダレーナはお転婆で、ユーモラスで、作者は彼女を窮地に陥れ、読者をハラハラさせるサービスも忘れない。それでいて、歴史ミステリーとして読み応えのある作品である。
出典: www.amazon.co.jp
この時代ならではの問題や、事件解決への弊害が自然と読み込めて楽しいです。翻訳本は、訳される方のセンスに一任する部分がありますが、この本では妙な野暮ったさも感じませんでしたが、ただ、現代では使わない表現(=読みにくい)があったりと、読者層を特定してしまうかなというきらいはありました。そういったことを含めても作品自体にいっさいの問題はなく、どんどん読んでいけるのは原作が素晴らしいからだと思います。欧州の暗い雰囲気が好きな方にはぜひ読んでいただきたい作品ですね。
出典: www.amazon.co.jp
謝罪代行社
最近のハヤカワの傾向として青春小説的なミステリー・犯罪小説
というのがあると思うのですが、この本はまさにそれで、ベルリン
の若者の日々と事件という二つの面を持つ小説です。
ベルリンの町の風景と今の20代の青年達の姿の描き方に生々しさ
があって読ませます。
出典: www.amazon.co.jp
白雪姫には死んでもらう
冤罪被害者とその親までもがドイツの村社会で言われなき差別と迫害を受ける。この状況は、日本でも十分想像できるので読んでいてつらかった。そこに出所後偶然居合わせた冤罪のきっかけとなった殺人事件の被害者によく似た少女が村に居合わせ冤罪被害者に興味を持つことから真犯人たちの目論見が崩れていく。主人公の刑事たちには、身元不明の少女の遺体が持ち込まれ後にその殺人事件の被害者の一人であることが判明し物語が複雑する。そこに主席警部(日本ではどの階級に相当するのだろう?)オリヴァーの家庭問題やその部下ピアにも価値ある不動産を手放さなければならない事情が絡まり(私には前者が重く感じられた)、更に複雑化していく。このような重厚な物語を娯楽作品として仕上げている点で高い評価をしたい。
出典: www.amazon.co.jp
白雪姫という言葉が、ドイツの地方の閉鎖性や人間関係の狭隘さのイメージ喚起になっている部分もいいです。この手のネタは最近の推理小説に多いよなあという気はするのですが、構成や筆運びだけでなく、作者の人間関係の書き方やここのキャラクターの書き方が上手いので、読まされてしまう。
出典: www.amazon.co.jp
凍える森
本書の特長は、なんといっても、ひとつはそのスタイルだろう。友人や教師、郵便配達人、近所の農夫、神父など、犠牲者一家を知る者の証言がメインの構成で、私たち読者は、いわば新聞記者や刑事のような立場で彼らと向き合い、そして、ちょうど薄皮が一枚ずつむかれて行くように、次第に、惨殺された一家の真の姿と真犯人があぶりだされてゆく過程を味わうのだ。
出典: www.amazon.co.jp
この作品はドイツ本国でミステリーの収穫として大きな評価を得ているらしく、日本で言えば『このミス』の首位独走といった所でしょう。国によってミステリーの基準や形も違って当然で、私の読んだ印象はトリッキーな日本式パズラーでは無く、ややホラー寄りのドメステック・サスペンスといった感じです。
出典: www.amazon.co.jp