ショートショートだけじゃない!?星新一の本
至極短い小説、ショートショート。シニカルな目線と分かりやすい文体。皮肉で、それでいて人を惹きつけてやまないショートショートを1000編以上書き上げた男、星新一。しかし、彼の魅力は何もそれだけではない?その脱帽もののアイディア能力を生かしたおすすめ本をセレクトしました!秋の夜長に是非、星新一を。古い?とんでもない。今読んだって充分楽しめることは、「ショートショート」でご存じでしょう?
できそこない博物館
帯にある通り、星さんのアイディア集です。というか、「作品にならなかった」という、いわゆる「ボツネタ集」です。いくらプロでも、すらすらとアイディアや文章が出てくるわけはありません。また、「これは行けるかも」と思っても、どこかで行き詰って、結局ボツに…しかし、作品は作家にとっていわば子供のようなもの。一度作品にならなかったからといって日の目を見させないというのはあまりにも口惜しい…ということで、いっそ「ボツネタ集」として公開し、かつ創作について考えてみようというのがコンセプトです。「面白い話になったろうに、もったいないなあ」というネタがてんこ盛りです。作品に関すること以外でも、氏のアイディアマンぶりを物語るようなエピソードもあり、何より文章が読みやすいのでかなり面白いです。
進化した猿たち(全3巻)
星さんの趣味の一つ。それは海外の「ヒトコマ漫画集め」。アメリカなどによくある、絵一枚だけ(ときおりキャプションも付きますが)で笑わせるヒトコマ漫画をジャンルごとに分け、それについての感想や、漫画以外での文化の考察を述べたものです。これまた気軽に読めます。ついでに言うと氏はヒトコマ漫画について独特の分析、考察をまとめ、別のエッセイにまとめもしています。何にせよ、星さんの才能の「ヒトコマ」が垣間見える三冊です。
きまぐれ遊歩道
これはどちらかといえば普通のエッセイに当たります。が、最初の「歴史トリビア集」のようなものをエッセイに載せてしまおうという発想が凄いと思います。
ショートショートでもなければ、小説でもない、戯曲形式の一冊。高利貸しとインチキ霊媒師の夫婦がお互い毒づきながらも互いの仕事に協力し、マンションの一室がそれぞれの職場へと様変わりします。つまり、舞台は常に同じ場所。登場人物は先の夫婦と一人娘、夫婦各々の客と…彼らの後をくっついて歩く背後霊の皆さん。人間のパートと背後霊のパートが交互に展開されます。
『トリビアの泉』でお馴染みのアイザック・アシモフ著の「トリビア集」を翻訳した一冊。原著はアシモフ氏ですが、文体は星節全開です。簡潔にまとめられているので読みやすいことこの上ない、といった感じです。
没後刊行された本です。内容は、星さんによって発掘された作家さんや侍女マリナさんによる追記や、星さんが「非常時に持ち出す」最優先のものとして炒め物一部公開、宝物の写真等です。死後もこうした本が出されるのですから、いかに愛されているかがよくわかります。