大家さんと僕(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『大家さんと僕』とは、お笑い芸人である矢部太郎が描く8コマストーリーで構成されたエッセイ漫画。「第22回手塚治虫文化賞短編賞」を受賞。2020年にNHK総合テレビでショートアニメ化もされた。「僕」はマンションを追い出され、ひょんなことから87歳の「大家さん」が住む木造一軒家の2階を間借りすることになる。世話焼きで上品な大家さんと「僕」の「不思議な2人暮らし」をハートフルに描く。

大家さんの実兄。「僕」が住んでいる部屋に以前住んでいた。すでに亡くなっており、大家さんは月命日に兄の好物のウナギを仏壇に供えている。

長野の友人

戦時中、大家さんが疎開先の長野で出会った友達。周りの子たちは方言なのに自分だけ標準語であることを当時の大家さんは気にして、長野の方言をしゃべろうと努力していた。そんな大家さんに対し、「そのままでいいよ」と優しく言ってくれた。今も親交が続いている。

『大家さんと僕』の用語

おやき

戦時中、大家さんの疎開先だった長野の名物。疎開先でできた親友は今でも親交があり、作中ではその親友からのおくりものとしておやきが登場する。そのおやきをおすそわけしてもらった「僕」は大家さんの戦時中の話に興味がわいた。大家さん「思い出の味」である。

赤いスーツケース

昔、大家さんが若い頃、船でフランス旅行をしたときに使っていたスーツケース。赤くて大きな古びている。そのスーツケースの中には別れた夫が描いたサザエの絵が入っていた。赤スーツケースは「僕」が引き取り、「僕」と共にいくつかの国をまわった。今はキャスターが壊れて「僕」の自宅の箪笥替わりに使われている。大家さんの思い出の品であると同時に、「僕」にとってもかけがえのない大切な思い出の品である。

『大家さんと僕』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

大家さん「なんで日本が戦争に負けたがわかる気がするわ」

はじめて大家さんが「僕」をお茶に招いた際、「僕」の身体の細さを大家さんは心配した。そして「なんだか矢部さんを見てると、なんで日本が戦争に負けたかわかる気がするわ」とジョークを言った。戦時中を生きた大家さんが、現代の日本を憂いているような、独特のユーモアセンスを感じられるおもしろい発言である。

大家さん「歳だからもう転べないのです」

ゆっくり慎重に歩く大家さんは転べない。もし転んだら高齢だから致命傷になるだろう。「歳だからもう転べないのです。矢部さんはいいわね。まだまだ何度でも転べて」とつきそう「僕」に言った。若いから何度も失敗できる、という前向きな言葉にもとれるし、大家さんの独特なセリフ回しが癖になる。

大家さん「87歳の夏は今しかないのですものね」

大家さんは、自分の初恋の人とうまくお付き合いできなかった。それを時代のせいにして「もっとスレたかったわ」と「僕」にもらす。それを聞いた僕は「今からスレてもいいんじゃないですか?」と答えると、大家さんは「87歳の夏は今しかないのですものね 」と言った。大家さんは後悔を引きずっていはいるものの、歳をとっても今できる事やチャレンジ精神をもって今を生きている。そんな前向きな想いが感じられるセリフである。

『大家さんと僕』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

漫画化のきっかけは原作者・倉科遼との出会い

矢部太郎と大家さんが京王プラザホテルでお茶をしていた時に、矢部が以前から知り合いだった漫画家の倉科遼と偶然出会った。その際、倉科は大家さんと矢部を見て「おばあちゃん孝行だね」と発言。矢部が大家さんであることを伝えると、倉科は「お茶したりして不思議な関係だね」と驚く。倉科と話をするうちに映画や舞台の脚本にしたいということで、矢部は後日、絵コンテを描いて持っていった。すると倉科は「すごい面白いから、このまま漫画で出版した方がいいよ!」と絶賛。倉科のお墨付きをもらい、漫画化を進めることになった。

大家さんの「上機嫌さ」の理由は「言葉遣いの丁寧さ」

明治大学教授「齋藤 孝」との対談で作者の矢部太郎は、大家さんが上機嫌に見える理由として、「言葉遣いの丁寧さ」をあげている。「あいさつはいつだって『ごきげんよう』なんです。ご両親が教育者だったので、徹底して言葉遣いを指導されたらしく、だから品が良いし、機嫌よくも見える。相手を思うからこそ、丁寧にお話しされているともいえますよね」とインタビューでのべている。

大家さんは戦争の話が好き

矢部はインタビューで、「大家さんは何の話をしても最終的に戦争の話になってしまう」と語っている。編集者との打ち合わせで大家さんとの面白いエピソードをあげていった。どのエピソードも面白く、泣く泣く落としたエピソードも多い。特に戦争の話は多く、それだけで1冊本ができるほどだという。しかし、話も重く、バランスを考えた結果、いくつかのエピソードは漫画にはなっていない。

漫画の表紙で編集者と揉める矢部

矢部は編集者に対し、「表紙は僕が描かない方がいいんじゃないか」と当初もらしていた。矢部いわく、「もっと重厚感のある油絵風のものがいいんじゃないか」ということだった。矢部は自分の絵が表紙を飾って売れるのか心配だったようだ。結果として編集者が矢部を説得し、矢部が表紙を描くことになった。

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