新年にふさわしい心に響く詩【長田弘、谷川俊太郎、他】

長田弘の『最初の質問』という詩は、新年を迎えた清々しい朝のような作品だ。元旦の新聞に掲載されたこともあり、多くの人に親しまれている。ここではそんな、新年にふさわしい爽やかな詩を紹介する。

最初の質問 長田弘

かなり前になるのですが、元旦の新聞に掲載されていました。

その当時、私はまだ子どもでしたが この詩がとても気に入り切り抜きし

いつも読み、とてもお気に入りでした。

何年たっても、元旦になると この詩をふと思い出すのです。

【最初の質問】 長田弘

今日あなたは空を見上げましたか。
空は遠かったですか、近かったですか。
雲はどんな形をしていましたか。
風はどんなにおいがしましたか。
あなたにとって、いい一日とはどんな一日ですか。
「ありがとう」という言葉を今日口にしましたか。

窓の向こう、道の向こうに、何が見えますか。
雨の滴をいっぱいためたクモの巣を見たことがありますか。
樫の木の下で、あるいは欅の木の下で、
立ち止まったことがありますか。
街路樹の木の名前を知っていますか。
樹木を友人だと考えたことがありますか。

この前、川を見つめたのはいつでしたか。
砂の上に座ったのは、草の上に座ったのはいつでしたか。
「美しい」と、あなたがためらわず言えるものは何ですか。
好きな花を七つ、挙げられますか。
あなたにとって「わたしたち」というのは、だれですか。

夜明け前に鳴き交わす鳥の声を聴いたことがありますか。
ゆっくりと暮れていく西の空に祈ったことがありますか。
何歳の時の自分が好きですか。
上手に年を取ることができると思いますか。
世界という言葉で、まず思い描く風景はどんな風景ですか。

今あなたがいる場所で、耳を澄ますと、何が聞こえますか。
沈黙はどんな音がしますか。
じっと目をつぶる。すると何が見えてきますか。
問いと答えと、今あなたにとって必要なのはどっちですか。
これだけはしないと心に決めていることがありますか。

いちばんしたいことは何ですか。
人生の材料は何だと思いますか。
あなたにとって、あるいはあなたの知らない人々にとって、
幸福って何だと思いますか。

時代は言葉をないがしろにしている。
あなたは言葉を信じていますか。

出典: www.kairesort.jp

【朝】 谷川俊太郎

また朝が来てぼくは生きていた
夜の間の夢をすっかり忘れてぼくは見た
柿の木の裸の枝が風にゆれ
首輪のない犬が日だまりに寝そべっているのを

百年前ぼくはここにいなかった
百年後ぼくはここにいないだろう
あたり前なところのようでいて
地上はきっと思いがけない場所なんだ

いつだったか子宮の中で
ぼくは小さな小さな卵だった
それから小さな小さな魚になって
それから小さな小さな鳥になって

それからやっとぼくは人間になった
十ヶ月を何千億年もかかって生きて
そんなこともぼくら復習しなきゃ
今まで予習ばっかりしすぎたから

今朝一滴の水のすきとおった冷たさが
ぼくに人間とは何かを教える
魚たちと鳥たちとそして
ぼくを殺すかもしれぬけものとすら
その水をわかちあいたい

谷川俊太郎詩集
<詩集 空にに小鳥がいなくなった日所収>

谷川俊太郎さんの詩を探していたら、素敵な詩に出会いました。

生きる です。

【生きる】 谷川俊太郎

生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木漏れ日がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみをすること
あなたと手をつなぐこと
生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと

生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまがすぎてゆくこと

生きているということ
いま生きてるということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ

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