「捨てられた」人たちが集まる魔女のいる島…「階段島」シリーズ
「捨てられた」人たちの住む島…こう書くとなにやらショッキングな物語を想像してしまうかもしれません。でも、実際に「捨てられた」人たちは嘆き悲しむこともなく、淡々と自分の日常を生きていこうとしています。そんな中で主人公は、ひとりの少女と再会します。「この話はどうしようもなく、彼女に出会った時から始まる」(「いなくなれ、群青」318ページから引用)、「階段島」シリーズはそういう物語なのです。
魔女の住む島「階段島」
島中に階段が張り巡らされ、その頂上には魔女が住むといわれる「階段島」を舞台にした「階段島シリーズ」(作・河野裕)。現在、「いなくなれ、群青」「その白さえ嘘だとしても」の2冊が発刊されています。
「捨てられた人々の島」と最初に説明はあるのですが、なぜ捨てられたのか、誰に捨てられたのか、それについては触れられることなく物語が始まります。
そして物語の冒頭、主人公は「真辺由宇」という少女に再会します。下の画像の少女がそうです。
なぜ、誰によって「捨てられた」のか
「わからないことがあればいつまでも質問を続ける。彼女はいつだって完璧な正解を求めているし、この世界には確かにそれが存在しているのだと信じている」(「いなくなれ、群青」25ページから引用)
なんだか凄く生きにくそうな少女ですが、主人公は「彼女の顔だけは見たくなかった」と言います。でもそれは彼女が嫌いだからではありません。むしろ中学時代のある出来事をきっかけに、毎日のように行動を共にするほど親しかったのです。だったらなぜ「階段島」で会いたくなかったのか。これがなぜ、誰によって「捨てられた」のかにつながる伏線になっているのです。
明確な登場人物・キャラクターの行動原理
河野さんの作品の特徴として、キャラクターの行動原理が非常につかみやすいというのがあります。キャラクターの性格を明確に定義して、そこから大きくはみ出すことがないからです。見方によっては意外性がないというふうに取られるかもしれませんが、そのあたりは好みの問題でしょう。いわゆる「ライトノベル」らしくないのも確かなのですが…。