天才王子の赤字国家再生術〜そうだ、売国しよう〜(ラノベ・漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『天才王子の赤字国家再生術〜そうだ、売国しよう〜』とは鳥羽徹によるライトノベル、およびそれを原作とするアニメ、漫画作品である。ライトノベルはGA文庫より刊行されている。ナトラ王国の摂政を務めることなったウェインは国を売ってしまって、悠々自適な隠居生活をしたいと考えていた。そのために知略をめぐらせるが、それが思わぬ波乱を呼びウェインが望んでいるのとは違った展開になってしまう悲喜こもごもを描いた作品である。

『天才王子の赤字国家再生術〜そうだ、売国しよう〜』の概要

『天才王子の赤字国家再生術〜そうだ、売国しよう〜』とは鳥羽徹によるライトノベル、およびそれを原作とするアニメ、漫画作品である。ライトノベルはGA文庫より刊行されている。2019年度版「このライトノベルがすごい!」では、新作部門で4位、総合で14位の評価を受けている。漫画版はスマホ用アプリ「マンガUP!」で連載され作画はえむだが担当している。アニメは2022年に放送された。
ナトラ王国の摂政を務めることになったウェインは才能にあふれた王子であった。しかし、それゆえに自国がどうしようもないくらい行き詰っていることに気づいていた。ウェインは国を売ってしまって、悠々自適な隠居生活をしたいと考えた。そのために、国の価値を少しでも上げようと弱小国家ナトラのマネジメントに乗り出す。しかし、その過程で思わぬ成功を重ね、国内外で注目されるようになってきてしまう。

『天才王子の赤字国家再生術〜そうだ、売国しよう〜』のあらすじ・ストーリー

マーデン王国戦

ナトラ王国のウェイン・サレマ・アルバレストは才能あふれる王子であった。それゆえにこの国がどうにもならないほど行き詰っているということを理解していた。ウェインは少しでも国の価値を高めた後に、売国して自身は悠々自適な隠居生活をしたいと考えていた。そのような折に隣国のマーデン王国がナトラに戦争を仕掛けてくる。ウェインはナトラと軽くやりあったあとにすぐに講和するという計画を立てる。ナトラ軍はウェインの機転により帝国から引き出した戦闘のノウハウと資金により増強されていた。さらに開戦の直前のウェインの鼓舞により軍の士気が高まっていた。そのため、ナトラ軍は予想外の善戦をする。それに焦ったマーデンの将軍はウェインを直接狙うが、ウェインの側近ニニム・ラーレイが将軍を討ち取り予定外の完全勝利をおさめてしまう。それにナトラ軍の士気が高まり、結果的にはマーデンの経済的な要所であるマーデンの金鉱まで奪うことになってしまう。
マーデン金鉱を奪ったものの実は金鉱は枯渇しかけていることが判明する。戦争で使った費用を回収できると思っていたウェインには予定外であった。そこで、ウェインはマーデンが金鉱の枯渇しかけている状態に気づいていないことを利用することを考える。ウェインの立てた作戦はマーデンと均衡状態を作り出し、講和に持ち込み、価値の低い金鉱を買い取らせるというものであった。これを実現するためにナトラ軍は金鉱でマーデンに籠城戦を仕掛ける。マーデン軍は大群で迫るが地形をうまく利用するウェインに翻弄される。その状況にマーデンは使者を送り一方的な降伏勧告を行ってくる。それを軽く断るウェインであったが、使者がニニムを侮辱したことに静かに怒る。大陸で広く信仰されるレベティア教で獣という扱いのニニム達フラム人は、一部の国では奴隷扱いで迫害されていた。それを許さないウェインの逆鱗に触れたのである。総攻撃を仕掛けるマーデンに対して、ウェインは本陣に直接不意打ちをかけて指揮官を倒し籠城戦に勝利する。
ウェインはこの勝利をもってマーデンと講和をして金を引き出すことを考えていたが、マーデンはカバリヌ王国に攻められ滅ぼされてしまう。資金の当てを失ったウェインであったが、枯渇しかけていた金鉱から新たな鉱脈が見つかり、何とか黒字にこぎつけるのであった。

ロウェルミナの来訪

アースワルド帝国は皇帝が後継者を指名せずに崩御してしまったために、3人の皇子たちが跡目争いで混乱していた。そんな折に皇子たちの妹であるロウェルミナ・アースワルドがナトラを尋ねてくる。ロウェルミナはウェインの士官学校時代の悪友であったロワ・フェルビスであった。ロウェルミナはウェインに表向きは縁談を申し込みに来たということであった。しかし、その真の狙いは帝国の跡目争いの隙をついて反乱を企てている勢力を一掃することであった。ロウェルミナはナトラに隣接している反乱勢力の一つであるアントガダル侯を刺激して挙兵させることで反乱勢力の証拠を押さえる計画を立てていた。それを察知したウェインは対抗策を立てるが、二人の予想を超えて、アントガダル侯の嫡子であるゲラルトが訪ねてくるという事態が発生する。ゲラルトはロウェルミナに好意を持っていて、ナトラにロウェルミナがいると聞いて直接訪ねてきてしまったのであった。ウェインとロウェルミナはそれぞれの目論見のためにゲラルトをうまく接待することを考える。ウェインが催した宴の席でゲラルトはロウェルミナに良いところを見せようと思い、ウェインに剣の試合を申し込む。ウェインは花を持たせるために適当に引き分けに持ち込むつもりであったが、事故によりゲラルトはバルコニーから転落死してしまう。
この状況を押さえつつ、反乱の証拠を得ようと考えたウェインは自らアントガダル候領に赴く。そこで、アントガダル候グリナッヘにすでに反乱のことはロウェルミナが察知していると通告し、家を取り潰さない代わりにすべての罪を死んだゲラルトに被せて、反乱の証拠をすべて提出することを提案する。それに対してグリナッヘは、一度は同意したものの、手のひらを返し少数精鋭でウェインに迫る。しかし、追いかけた先にはナトラ軍が待ち構えていた。慌てて逃げようとするグリナッヘであったがそこに背後からロウェルミナの手勢が現れる。ウェインの用意周到さに圧倒されたグリナッヘは敗北を認め、ロウェルミナに慈悲を求めるのであった。
すべて終えた後に、ロウェルミナはウェインにもっと簡単な方法があったのではないかと尋ねる。それに対して、ウェインはグリナッヘの心をへし折ることによって、ロウェルミナがその後にグリナッヘを御しやすくできるように今回の作戦を立てたということを告げる。それは、士官学校時代に、ロウェルミナが困ったときには助けるという約束を守るためであった。

聖霊祭

マーデンを征服したカバリヌ王国の王から、大陸に広く信仰されているレベティア教の聖霊祭にウェインは招待される。カバリヌではフラム人が迫害されているため、ニニムはフラム人の特徴である白髪を黒に染めて同行する。一方でウェインの不在の間に、謎の商人アイビスの情報によりナトラ内の不穏分子が反乱を企てる。これは将軍ハガルの引退したことも一因になっていた。ウェインはカバリヌへの道中で賊に扮した軍に襲われる。ウェインは先の戦いで滅んだマーデン王国の残党軍がいるエリアにわざと入ることにより、賊を退けることに成功する。しかし、マーデン残党軍は、王国が滅ぶきっかけの一つになったウェインを殺そうとする。それに対して、ウェインはともにカバリヌに行き、聖霊祭で集まっている諸侯に助力を請う機会を与えるという。そして、道中襲ってきた賊がカバリヌの者であった場合はマーデン残党軍と手を組むことも提案する。マーデン残党軍の代表である王子の名代であるゼノはこれに同意する。
カバリヌに着いたウェインをカバリヌ王オルドラッセは歓迎した。オルドラッセはウェインをレベティア教の要職である選聖候(せんせいこう)に推薦することをほかの選聖候に宣言する。その狙いはナトラの懇意になるという成果で国内での自身の求心力を回復することであった。一方で、道中でウェインを狙ってきたのはカバリヌの将軍ルベールとマーデンを裏切ったホロヌィエであることが判明する。ルベールはオルドラッセによるウェインの選聖候を良しとしていなかったためである。ウェインはとりあえず選聖候に推薦されるため、ほかの選聖候と面会することにする。そのうちの一人であるカルドメリアを尋ねる際に、マーデン残党軍への助力を求めるためにゼノも同行する。しかし、カルドメリアが選聖候に推薦する条件としてウェインに突き付けたのはマーデン残党軍の殲滅であった。
ゼノはウェインにオルドラッセへの面会に同行することを頼み込み、ウェインはそれを受け入れる。面会でウェインはオルドラッセの行き過ぎた血統主義に辟易として、オルドラッセと組むことに乗り気でなくなってきていた。さらに、オルドラッセはフラム人を使った狩りを楽しむためにナトラに住むフラム人を提供するように依頼してくる。しかも、それにはニニムも含めるもので、一緒に狩りをすることを提案してきた。その提案に、ウェインはその場でオルドラッセを暗殺してしまう。また、その場に居合わせたホロヌィエはゼノが討ち取る。ウェインはオルドラッセの暗殺の罪をルベールに被せてカバリヌから逃走する。罪を着せられたルベールは起死回生のためにウェインの追跡を始める。一方でナトラ国内では反乱が起きて国境付近でウェインを待ち構えていた。そこで、ウェインは追跡してくるルベールをやり過ごすことにする。結果的にルベールとナトラの反乱軍が鉢合わせになりつぶし合いが始まる。そこに、さらに引退したと思われていた将軍ハガルの軍が来て両軍を一掃する。ハガルの引退は反乱分子を一掃するためにウェインが仕掛けていた罠であった。
戦闘が終わりマーデンは元の王族の支配に戻った。マーデンの代表としてウェインのもとに訪れたのは王女のゼノヴィアであった。実はゼノはゼノヴィアが女性であることを隠すために扮していた姿であった。ウェインはマーデンが西側諸国の防波堤になることを期待していたが、ゼノヴィアはマーデンをナトラの統治に入れることを提案する。ナトラの家臣の喜びに後を引けなくなったウェインはそれを受け入れることになる。ウェインの思惑とは別にナトラは国を大きくすることになってしまった。

ミールタースの皇子会談

商業都市ミールタースで、ミールタースとアースワルド帝国の融和を記念する式典が開かれ、それと並行して帝位継承権を持つ4人が帝位をめぐって話し合う皇子会談が行われようとしていた。ナトラも招かれていたがウェインは乗り気ではなかった。そのため、式典に向かうか決める会議の中、ナトラの戦後処理を理由にウェインは会談を欠席する方向に勧めようと考えていた。しかし、妹のフラーニャ・エルク・アルバレストはその会議の中でウェインと目が合い頷いてきたのを、自分への期待と勘違いして、ウェインに代わり自分が式典に出席すると宣言する。
ロウェルミナは式典に訪れたフラーニャを、帝位継承権を争う長兄ディメトリオ、次兄バルドロッシュ、三男マンフレッドに紹介する。これはナトラがロウェルミナの陣営であることを見せつけるためのものであった。ディメトリオはウェインでなくフラーニャが訪れたことに対して非難をする。しかし、その発言を逆にロウェルミナとマンフレッドに諫められる。
フラーニャは自身がロウェルミナに帝位継承権争いのためにうまく利用されてしまったことに反省しもっと自己研鑽を積む必要性を感じる。そのために、式典の最中に側近のナナキの指導のもと、周りを観察しながら会話の主導権を得るための方法を学ぼうとする。次の日にはミールタース市長の案内で市民議会に参加する。その様子を熱心に観察するフラーニャに市長も一目置くようになる。また、その後も熱心に通ったことから議会に所属する市民から議論に参加することも提案されるくらいに信用を得ていく。
一方で、ディメトリオはナトラがフラーニャを寄こしたことについて軽く見られたと怒りに震えていた。そこで、急にフラーニャのもとに訪れ、妻になることを迫る。その狙いは妻となったフラーニャを酷い目に合わせることでウェインに対しての嫌がらせをすることであった。ディメトリオが強引に迫るところに、仕事を急ぎ終わらせたウェインが現れる。ウェインとその場に居合わせたロウェルミナが協力して、ディメトリオを一度引かせることに成功する。
後日、ウェインとディメトリオはフラーニャの結婚について会談を設ける。そこで、自分に対して出されたお茶に毒が入っていることに気づいたウェインはそれを出した給仕に飲むように迫る。その様子にディメトリオは毒が入っているわけがないと毒入りのお茶を飲んで倒れてしまう。この毒を仕込んだのはウェインを危険視するマンフレッドによるものであった。ディメトリオは一命を取り留めたが、すぐに領地に逃げ帰った。一方で、残ったバルドロッシュとマンフレッドの軍は、毒がミールタースの策略だと非難して、ミールタースを軍で取り囲んでしまう。さらにそこにレベティア教のカルドメリアとグリュエールが事態を治めることを名目に軍を引き連れて現れる。頼りのウェインは連日の疲れから倒れてしまう。ミールタースの市民議会はこのままでは自治権を失ってしまうことに混乱状態に陥る。そこに、フラーニャは演説を行い市民議会の混乱を治める。さらに体調が回復したウェインの策で、フラーニャはミールタースの全市民3万人を引き連れて都市を脱出させ、レベティア教軍の保護下に入ることを成功させる。3万人の避難民を受け入れる余裕がないレベティア教軍は、ウェインの武器を3倍の値で買い取る代わりに、あとはミールタース側だけで何とかするという提案を受け入れざるを得なくなる。ミールタースの市民が武装して迫ってくる状況にバルドロッシュとマンフレッドは困惑する。そこに、ウェインはおおもとの原因であった毒の騒ぎがディメトリオの自作自演であるということにして、ディメトリオに全責任を押し付けることをバルドロッシュとマンフレッドに提案する。この状況に得がないと考えた二人はそれを受け入れて、事態は収拾されることになった。

ソルジェスト王国戦

レベティア教に属する国は帝国と敵対しているため、帝国産のものの輸入を禁止していた。そこで、どちらの国とも交易のあるナトラは、帝国産のものを輸入し、それをナトラ産と偽ってレベティア教に属する国に売るということで儲けていた。その状況にレベティア教に属するデルーニオ王国の宰相であるシリジスはナトラとマーデンのもとに抗議を送っていたが、二国はこれを無視していた。
一方でソルジェスト王国のグリュエールにウェインは招かれていた。ウェインはグリュエールの狙いはナトラと緩やかな友好関係を結ぶことであると考えていた。これにより、ナトラがこれ以上西進してくることを防ぎつつ、ソルジェスト王国と不仲なデルーニオ王国に対抗する協調路線を作ることが目的であると予想していた。しかし、一向にそういった話をする機会は訪れず、むしろ話し合いを避けているようであった。ウェインはこれを、自分を足止めすることでナトラに何かを仕掛ける、あるいはすでに仕掛けているのだと読んだ。急ぎ、帰国する準備をするウェインであったが、そのタイミングでグリュエールに呼び出される。ウェインはそこで同盟の意思があるかを確かめ、ない場合はグリュエールを人質にして脱出する予定であった。しかし、ウェインの同盟の申し出にグリュエールはあっさり同意する。帰国するとマーデンとデルーニオ王国が衝突してしまったという報がもたらされた。さらに、そこにソルジェスト王国がデルーニオ王国との同盟条約に従い、参戦してくる。グリュエールがウェインを招いたのは、ウェインを敵として戦うに値するかを見極めるためであった。
ウェインとゼノヴィアはソルジェスト王国の進攻を止めるためには戦いの根拠であるデルーニオ王国との戦闘を終わらせることが必要であると考え、直接宰相シリジスのもとに訪れた。ゼノヴィアはデルーニオ王国に多くの譲歩をするがシリジスは一向に譲らない。それに対して、ウェインはナトラがソルジェスト王国に蹂躙された場合、ナトラの80万人の民をデルーニオ王国に向かわせると脅す。さらにデルーニオ王国で流行している帝国産の服には毒が含まれており、間もなく民が毒に侵され死んでいくというブラフを打つ。それらが重なってしまえばデルーニオ王国は混乱に陥ってしまい、滅んでしまうとウェインはシリジスを脅した。そこに、ナトラ軍が敗走したという情報がもたらされ話が現実味を帯びてくる。さらにダメ押しで毒の解毒薬を用意していると伝える。シリジスはついにウェインの話を受け入れて、ナトラと協力してグリュエールを挟撃することになる。グリュエールはこれを突破しようとするが、突出したグリュエールをニニムが討ち取り、ナトラは勝利を収める。

『天才王子の赤字国家再生術〜そうだ、売国しよう〜』の登場人物・キャラクター

ナトラ王国

ウェイン・サレマ・アルバレスト

CV:斉藤壮馬
ナトラ王国の王太子。病気に倒れた父に代わり急遽摂政を担うことになる。聡明であるが、怠け者でもある。ナトラが弱小国で行き詰っている状況であると理解しており、国を売って悠々自適な隠居生活をしたいと望んでいる。補佐官であるニニムを自身の心臓として信頼している。ニニムが侮辱されたときには普段の態度からは考えられないほどの激しい行動を見せる。

ニニム・ラーレイ

CV:高橋李依
ウェインの幼馴染であり補佐官でもある。フラム人であり、その特徴である白い髪と赤い目をしている。聡明であり高い戦闘力も持ち合わせている。ウェインが怠惰な態度を取ろうとすると、それを諫めている。一方で、ウェインにはニニム心臓であると言われていることを誇りに思っている。士官学校時代にはロウェルミナとも友人であった。

フラーニャ・エルク・アルバレスト

CV:千本木彩花
ナトラ王国の王女で、ウェインの妹にあたる。兄を慕っており、役に立ちたいと思っている。ニニムことも慕っており、彼女とウェインに結婚してほしいと考えているが、ニニムにそれを否定されている。

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