破滅的な人妻、『アンナ・カレーニナ』
資本主義の発展と共に陰りを見せていた貴族社会への批判を、一人の上流階級女性の人生に乗せて描いた物語、『アンナ・カレーニナ』。文豪・ドストエフスキーに〈芸術として完璧、当代ヨーロッパ文学の最高傑作〉と言わしめた作品でもあります。
あらすじ・ストーリー
恋の甘やかな喜びを知ったアンナはウロンスキイに想いを傾けていくも、体面を重んじる夫からは牽制される。我慢できずにウロンスキイと駆け落ちをするアンナ。しかし一方でウロンスキイは周囲の冷たさから貴族社会に一抹のむなしさを感じ取る。突き付けられる現実によって恋人と心がすれ違う様に絶望したアンナはやがて鉄道へと身を投げ、物語は終焉を迎える。
反映される、作者の鉄道嫌い
理由としては〈ブルジョワによって踏みつけにされた労働者の空腹と過労、栄養失調の産物であるから〉だそう。アンナとウロンスキイの出会いの場面で踏切番を事故死させ、やがてはアンナを轢き殺す鉄道を、トルストイは"巨大な無慈悲なモノ"の象徴として描いています。
実写映画
上画像は、2012年のジョー・ライト監督による映画版。華やかで美しい映像が印象的です。
まとめ
自分勝手と言えばそこまでだけど、何か変革を求めて身を滅ぼしたのであろうアンナ。彼女の心理描写のリアリティに、思わず(トルストイって女性なのでは…?)とすら思えるすごみがあります。日本で最も尊敬された外国人作家・トルストイが作り上げた、一読の価値ある作品です。