マイ・ブロークン・マリコ(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『マイ・ブロークン・マリコ』とは平庫ワカの漫画。webコミック誌『COMIC BRIDGE online』にて2019年7月16日から全4話の連載がスタートした。Twitterでは毎話トレンド入りし、単行本全1巻は即重版が決定する。主人公のシイノは26歳の会社員。ある日ラーメン屋でラーメンを啜っていた彼女は、店のテレビで親友マリコの訃報を知る。心を病んでマンションから飛び下り自殺したマリコへの友情から、シイノは衝動的に彼女の遺灰を奪い、生前のマリコが旅したがっていた岬をめざして逃避行に出る。

ベンチで一夜を明かすなど自暴自棄な振る舞いをするシイノを心配するマキオに、シイノは「同じこと言ったっけな あたしもこのコに」と零す。
マキオに「自分を大切にしてください」と言われたシイノは、過去のマリコに自分もくり返し同じことを説いた事を思い出すが、結局シイノの願いは報われずマリコは先に逝ってしまった。DV男と何度手を切らせてもマリコはせがまれれば会いに行き、また同じような男を選んではボロボロになっていく。身内にさえも大切にされた事がないマリコは自分を大切にするという意味がわからず、唯一自分を大切にしてくれたシイノに強く依存していた。マリコを救えなかったシイノの後悔がひしひしと胸に迫る。

「そーだよ わたしぶっ壊れてるの」

生前のマリコがDV常習犯の元恋人にまた会いに行った自分に対し、本気で怒るシイノに放った言葉。
苦労の末やっと別れさせた元恋人にこりずに会いに行き、怪我させられた上財布までとられたマリコにシイノは堪忍袋の緒が切れ、「あんた感覚ぶっ壊れてんじゃないの!」と暴言を吐く。それを聞いたマリコは「そーだよ わたしぶっ壊れてるの」と素直に認め、澄んだ目をしてシイノを見る。
愛情に恵まれない家庭で育ち、大人になっても虐げられ続けたマリコは、自分が幸せや生きている意味を実感できない壊れた人間であることをとうに知っていた。マリコの深い絶望が伝わるセリフ。

マキオ「……大丈夫です?」シイノ「大丈夫に見える…?あたし…」マキオ「大丈夫に見えますよ」

マリコの遺灰を掴みそこね断崖から海へ飛んだあと、浜辺に打ち上げられたシイノにマキオが告げたセリフ。
シイノは断崖から落ちたものの死なず浜辺に打ち上げられる。マキオはそんな彼女に、自分も大事な人を亡くして断崖から飛んだが死ねなかったと話し、死んだ人に会いたいなら自分が生き続けるしかないとシイノを諭す。そうすれば思い出の中で再会できる。
浜辺に突っ伏して動かないシイノに「……大丈夫です?」と確認すると、「大丈夫に見える…?あたし…」と問い返される。マキオははっきり「大丈夫に見えますよ」と答えた。マリコ亡きあともシイノに逞しく生き続けてほしい読者の願いとマキオの気持ちが重なるセリフ。

『マイ・ブロークン・マリコ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

『カドコミミ2020×ダ・ヴィンチ』7月号に特別描きおろし漫画が収録

comic-walker.com

KADOKAWA主催の夏の企画として、対象店舗でKADOKAWAの対象コミックスを買うともらえる小冊子『カドコミミ2020×ダ・ヴィンチ』7月号に、本作の特別描きおろし漫画が収録されている。生前のマリコとシイノのエピソードで、2人の友情の深さがより伝わる。

本作は翻訳版・電子書籍をあわせて10万部を達成

本作は翻訳版や電子書籍の売り上げを合わせて10万部を達成し、その喜びを作者の平庫ワカ自身がツイートしている。平庫ワカのツイートには本作の描き下ろしイラストもあり、バトンリレーするシイノとマリコが描かれている。

執筆前のイメージは「遺骨と旅する女」

realsound.jp

作者の平庫ワカは書評サイト『Real Sound』のインタビューを受け、本作を描いた動機と、その起点となったイメージを語っている。平庫ワカ曰く、当時は女の子の虐待死のニュースが多く報道され、虐待を生き延びたサバイバーの話を描きたいと思ったらしい。イメージとして最初に浮かんだのは「遺骨と旅する女」で、骨壺を抱えた若い女性と虐待のニュースが結び付いた結果本作が生まれた。

キャッチコピー「女同士の魂の結びつきを描く鮮烈なロマンシスストーリー」の「ロマンシス」とは愛情や友情の枠組みを超えた女同士の絆のこと

lgbt-life.com

『COMIC BRIDGE online』編集部が本作にふったキャッチコピー、「女同士の魂の結びつきを描く鮮烈なロマンシスストーリー」のロマンシスとは、男同士の究極の絆をさすブロマンズの対義語である。LGBTメディアサイト「Rainbow Life」はロマンシスを恋愛を伴わない女性同士の連帯、および信頼や友情に根ざすパートナーシップと定義している。
事件や冒険をさすロマンス(romance)と姉妹愛をさすシスターフッド(sisterhood)を組み合わせた造語であり、特別な絆で結ばれた女性2人が、共に障害や試練に挑む物語があてはまる。綺麗ごとでは片付けられない、切羽詰まったマリコとシイノの関係にふさわしい。

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