21世紀に語り継ぎたいクラシックな洋画50選-3-
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若い世代に見てもらいたいクラシックな名作洋画、その21〜30までを紹介いたします。
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「大人は判ってくれない」は、1959年公開、フランス映画。監督フランソワ・トリュフォー。
トリュフォー監督初の長編映画であり、監督自身の自叙伝的性質の強い作品です。全編モノクロで、著名な詩人ジャン・コクトーがこの作品を見て「この作品は奇跡」と最大限の賛辞をトリュフォーに贈ったという逸話が残っています。
本作はカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞、トリュフォーはこれにより「ヌーベルバーグ(新しい波)」の先鋒として認識されるようになりました。
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作品はトリュフォー監督の「分身」とも言える12歳の少年アントワーヌを中心に描かれます。
複雑な家庭環境、楽しくない学校生活、居場所のないアントワーヌにとって唯一の楽しみは映画を見る事だけ。親友ルネと会った日に学校をさぼったアントワーヌは、母親が街なかで見知らぬ男と抱擁している場面を見てしまいます。やがて家出をしたアントワーヌが向かった先は…。
少年の心が揺れ動く様を繊細に捕えた正に「詩的な」作品です。
ラストシーン、海を前にしたアントワーヌの瞳には何が写っていたのでしょうか。
勝手にしやがれ(À bout de souffle、英題:Breathless)
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「勝手にしやがれ」は、1959年公開、フランス映画。監督ジャン・リュック・ゴダール。
ゴダール監督初の長編映画でした。
本作はヌーベルバーグの記念碑的作品とも言われています。
従来の「映画制作の公式」を徹底的に無視したような、斬新な作りの作品です。
それは例えば「ジャンプカット」と呼ばれる技法(画面の連続性を無視してショットを繋ぎ合わせる手法)であったり、ハンディカメラを用いた街なかでの撮影であったり、即興演出をしたり、隠し撮りをしたり、と実に多岐に渡ります。
フランスの「ヌーベルバーグ」は、この後アメリカの映画にも影響を与え、それは「アメリカンニューシネマ」という動きになって現れる事になります。
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本作はストーリーを追うよりも、場面場面を楽しんで見る方がよいかもしれません。
また、個人的にはヒロイン・パトリシアを演じたジーン・セバーグのヘアスタイルやファッションが今見ても十分に通用するくらい、シンプルかつキュートなので、感心してしまいます。
このボーダーのワンピースなど、今流行っているものと言われても納得できてしまうくらいです。
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あるいは、こんな風にメンズもののシャツを素肌に羽織ってしまうのも逆に女の子っぽさが出て可愛いし。
主人公のミシェル(ジャン・ポール・ベルモンド)は、ラストの今際の際に「サイテーだ」とつぶやき、自ら自分の手で瞼を閉じて息絶えます。
それを目の前で見ても彼女は「サイテーってどういう意味?」と言うだけ。全編にドライな空気感が漂う作品でした。
アマデウス(Amadeus)
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「アマデウス」は、1984年公開、アメリカ映画。
同名タイトルのブロードウェイミュージカルの映画化作品です。
トム・ハルス演じるヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトと、F・マーリー・エイブラハム演じるアントニオ・サリエリの物語。ストーリーははサリエリの視点で進んでいきます。
本作はアカデミー賞の作品賞、監督賞、主演男優賞、脚色賞、美術賞、衣裳デザイン賞、メイクアップ賞、音響賞の8部門を受賞した傑作。
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映画の冒頭で流れる曲は、モーツァルトの「交響曲第25番」。
モーツァルトの曲は、その殆どが不思議な程「あ、これどこかで聞いた事がある」と思わせるものばかりですが、つまりそれだけ人の心にすっと入ってくる、魔法のような力があるからでしょう。
天才=モーツァルトと秀才=サリエリ。サリエリの嫉妬心と苦悩は、中途半端にいろいろなものがわかってしまう秀才であるが故、だったのでしょうか。
しかし、今の時代に生きていれば、サリエリは「敏腕編集者」として成功したかもしれなかった…とも思うのですが。
交響曲第25番ト短調 K. 183 第1楽章
ノッティングヒルの恋人( Notting Hill)
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「ノッティングヒルの恋人」は、1999年公開、アメリカ映画。監督ロジャー・ミッチェル。
ロンドンのノッティングヒルで古書店を営む冴えない青年(ヒュー・グラント)と、ハリウッドの人気女優(ジュリア・ロバーツ)の恋模様という、「ローマの休日」を現代に置き換えたようなストーリー展開です。
全編を通して、あたたかな空気を感じます。
主人公を取り巻く人達がみんな人間臭くて面白くて愛おしい。
だからそんな風に感じるのかもしれません。
ロンドンの四季折々の美しい風景を楽しむこともできます。
物語の最後、本当にハッピーなエンディングの風景とともに流れてくるのがこの曲。
最高にハッピーでスイートなコステロの「SHE」。大好きです。