「あさはかな夢みし」に登場した粥杖神事とは?小正月に尻を棒で叩くと妊娠?
平安時代の女性を描いた『あさはかな夢みし』では、「粥杖神事」という行事が登場する。この行事は『枕草子』などにも登場しており、1月15日の小正月に十二単衣の女房達が棒で尻をたたき合うというものであるらしい。
十五日、節供参り据ゑ。粥の木ひき隠して、家の御達(ごたち)、女房などのうかがふを、打たれじと用意して、常に後を心づかひしたるけしきもいとをかしきに、いかにしたるにかあらむ、打ち当てたるは、いみじう興ありてうち笑ひたるはいとはえばえし
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【枕草子】打たれまじ!とお尻をガードしている女房達の姿を想像するとおかしいですね。
【弁内侍日記】
人々杖(つゑ)持ちて用意する程、何とかしつらむ、簾(みす)をちと働(はたら)かすやうに、ちと見えし、かへりて少将内侍打(う)たれぬ。ねたき事限りなし。
【弁内侍日記】女房たちが杖(つえ)を持って身構(みがま)える間に、一体どうしたのか、為氏が簾(みす)を少し動かすように見えただけなのに、反対に少将内侍の方がお尻を打たれてしまった。悔(くや)しいったらありはしない。
【とはずがたり】の粥杖事件
(中略)女房の方(かた)にはいと堪(た)へがたかりしことは、あまりにわが御身(おんみ)ひとつならず、近習(きんじゆ)の男たちを召しあつめて、女房たちを打たせさせおはしましたるを、ねたきことなりとて、東(ひんがし)の御方と申しあはせて、十八日には御所(ごしょ)を打ち参らせんといふことを談議(だんぎ)して(後略)
【とはずがたり】作者の二条がお仕えする後深草院は、院自身だけではなく、周囲の男達まで命じて女房達の尻を打たせます。腹を立てた二条は、復讐すべく、女房たちとはかって、院をさんざんに打ちすえたのでした。
十五日粥(じゅうごにちがゆ)とは、一年中の邪気を払う為に正月十五日の朝食べる粥のことで、米の他、粟(あわ)・黍(きび)・稗子(ひえ)・篁子(みの)・胡麻(ごま)・小豆(あずき)の七種類の穀類を使った粥なので、「七種粥(ななくさがゆ)」とも呼ばれる。また、十五日は満月(望月)であることから、「望粥(もちがゆ)の節供」とも言います。
実は、現在でも行なわれている地域がある!
嫁ごの尻たたき
待ち受けていた村の子どもたちが、ワラを巻いた棒で花嫁の尻を叩くという実に風変わりな習俗。嫁が家に居着くようにとか、子宝に恵まれるようにとの願いを込めているといった解釈がある。
旧暦一月十五日の小正月(こしょうがつ)の前日に、前の年に、その集落に嫁入りした初嫁(はつよめ)の尻たたき行事です
尻打ち棒(直径5㎝、全長30㎝ほどの樫(かし)の木でつくった木槌(きづち)状のもの)をもった子どもたちが、「嫁御(よめご)の尻うたせんかい」といって、初嫁の家に行き、「餅だすか、酒だすか、出さんにおいては、嫁御の尻打ち、ポカーンショ」といって尻を打ったといいます。