ティアムーン帝国物語(ラノベ・漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ティアムーン帝国物語』とは、餅月望によるライトノベル小説、およびそれを基にした漫画・アニメ。転生で逆転人生をテーマにしたファンタジー作品である。強国ティアムーン帝国のミーア・ルーナ・ティアムーン姫が断頭台での最期を迎える瞬間、過去の記憶を取り戻し、運命を変えるために奮闘する物語である。姫が過去の記憶を活かして運命に立ち向かう「1度きりのファンタジー」が描かれており、バッドエンドを回避するべく奮闘する姫の努力が報われるのかが見どころ。

『ティアムーン帝国物語』の概要

『ティアムーン帝国物語』とは、小説家の餅月望によるライトノベル小説。転生と逆転をテーマにした人気ファンタジー作品であり、原作を基に漫画やボイスドラマ、アニメや舞台化された。『小説家になろう』で2018年から連載が開始されたている。『このライトノベルがすごい!』の単行本・ノベルズ部門では2021年版で6位を獲得した。『ティアムーン帝国物語』の原作小説は、TOブックスから刊行されている。漫画版は、TOブックスの公式Webコミックサイト『コロナEX』で連載。スピンオフ作品としては、『ティアムーン帝国物語~従者たちのお茶会~』の漫画版が発売している。また、『小説家になろう』でスピンオフ小説が連載されている。略称は「ティアムーン帝国物語」だ。
アニメは原作小説を基にしており、ティアムーン帝国の「わがまま姫」として知られるミーア・ルーナ・ティアムーン姫が民衆の革命により20歳で処刑されるも、何故か死なずに過去に転生し自身の運命を変えるために奮闘する物語である。アニメは2023年に放送された 。制作はSILVER LINK、伊部勇志が監督を務め、赤尾でこがシリーズ構成を担当。大塚舞がキャラクターデザインを手掛けた。音楽は藤本浩司(Sus4 Inc.)が担当しており、キャストには上坂すみれや楠木ともり、梅原裕一郎などが名を連ねている。
アニメの特徴は、過去に転生した姫が自身の過ちを修正し、帝国の未来をより良いものに変えようとする姿が描かれている点である。また、ファンタジー要素と歴史改変のテーマが組み合わさっており、ファンに新しい視点で物語を楽しむ機会を提供した。発売されたBlue-rayセットの特典として、キャストのサイン入り台本をプレゼントするというキャンペーンが展開された。
アニメシリーズの放送開始以来、原作シリーズの累計発行部数も伸び続けており、多くのファンに愛されていることが伺える。この作品はただの転生ものではなく、主人公が過去の自分と向き合い成長していく過程を描いた「逆転の物語」として、多くのファンに勇気と希望を与えた。

『ティアムーン帝国物語』のあらすじ・ストーリー

断頭台と違う現実

処刑されたはずのミーアは、過去に戻ったことに気付く。

ティアムーン帝国の第一皇女ミーア・ルーナ・ティアムーンは、帝国を荒廃させ、革命が起こった関係で牢獄に放り込まれた。3年後、ミーアが日記をひたすら書いているところへ最後の食事だといって、看守から嫌いな黄月トマトと黴びたパンを出される。
処刑日当日。ミーアは「どうしてこんなことに…」と繰り返し呟く中、ギロチンが落とされ視界が暗転した。
ベッドの上で目を覚ましたミーアは、幼くなっていることに気づく。とすると、あれは夢だったのか。ミーアはいつものように感じる王宮で、あれほど嫌だった黄月トマトのスープを食べるが、転生前に嫌というほど食べさせられたことで耐性がつき、美味しく感じた。転生前のミーアが死ぬ直前まで忠義を尽くしてくれたアンヌ・リトシュタインが粗相して持ってきたケーキを落としても、そのことを思い出して報いるために専属メイドにした。ミーアは様々なことを推測ってみて、これはやっぱり1度ギロチンにかけられたのだと確信した。
ミーアは図書館で本を読みながらこれから国の財政が悪化し、飢饉が蔓延し民衆が革命を起こして、近隣国が手を貸して介入することを思い出す。でも、それらのことに疎いミーアはどうしていいかわからない。これはやり直しの物語。12歳の自分に転生したミーアは、古ぼけた日記とこれから起きる未来の記憶を元に、西へ東へ奔走する。

文官ルートヴィッヒが味方に

ミーアにが最初にしなければならないのは、アンヌとともに最後まで忠義を尽くしてくれていたルードヴィッヒ・ヒューイットを仲間に引き入れることであった。彼は帝国の財政を立て直そうとしてくれる人物であった。ミーアはちょうどルートヴィッヒが上官に抗議して左遷されようとしていたところに遭遇する。このままいくと、彼が戻ってくるのは帝国の財政が破綻してからになってしまう。ミーアは間に割って入り、ルートヴィッヒを無理やり連れ出す。人気のないところまで来て、ミーアはルートヴィッヒに単刀直入に帝国の財政をどうすれば建て直すことができるか聞く。ルートヴィッヒはミーアに「あなた方の1回分の食事がどれくらいの金額になるか」と問いかける。ミーアは前世のルートヴィッヒから聞かされていた「あなたの1ヶ月分のお給金ぐらいかしら」と答え、ルートヴィッヒが財政をどのように建て直そうと考えていたのか、その考えをすらすらと話し始める。するとルートヴィッヒは膝を折り、「あなたのような聡明な方がいるとは感服いたしました」とミーアを褒め称える。そしてルートヴィッヒは勝手にミーアが幼すぎるために誰も耳を貸そうとしないと思い込んだ。ミーアが「私もいくら聡明でも間違うこともあるから遠慮なく言ってほしい」と言うと、ルートヴィッヒはミーアの謙虚さに心を動かされ、「全身全霊をかけてご協力いたします」と言ってくれて最大の味方を手に入れたのだった。
ミーアが日記を見るとルートヴィッヒが味方になったことで、帝国の財政が良い方へと向かう変化が起きていたが、断頭台送りになる結果は変わっていないのであった。

新月地区での視察

次にミーアはルートヴィッヒを連れて貧民街である新月地区を訪れる。ミーアは今から数年後に大流行する疫病が流行り、財政が悪化しルートヴィッヒの努力が無になってしまうことを知っていた。その発生源が新月地区なのだ。ミーアとルートヴィッヒ、アンヌとお付きの者が新月地区に着くと、道端に空腹で倒れていた少年ワグルをミーアが見つけた。ワグルは母が親に反対して村を出てきており、ルールー族の血を引いていた。母親が亡くなって行き場がなくなり、ワグルは新月地区にいたのだ。ミーアは指示を出してお菓子を渡したが、その場しのぎでしかない。ワグルの体調が思わしくないので近くの教会に運ぶことになった。そこでミーアがルートヴィッヒに「ここで流行病が起きたらどうなるかしら?」と示唆すると、彼は勝手に「そんなことまで見越していたとは」と戦慄する。教会に着いたルートヴィッヒは、住民に食糧を行き渡らせることと病院を作ることをミーアに提案してみるが、お金がない。そこでミーアは大商人からもらったという髪飾りを「これを売れば足りるかしら」とルートヴィッヒに惜し気もなく差し出す。ミーアは「なくなる時はなくなるし、壊れる時は壊れるもの。ならばせいぜい意味のある使い方をするべきですわ」と言うが、実際は未来で碌でもない連中に奪われてしまうのでそれならば自分のために使った方がいいと密かに思っていたからだ。もちろん髪飾りだけでは足りない。ルートヴィッヒはミーアが示した慈悲だと勝手に受け取って、貴族たちに働きかける。ミーアが先陣を切って資金の元を提供したことで、貴族たちは金を出さないわけにはいかなくなった。
こうして新月地区に病院が建設された。

セントノエル学園での生活

ミーアは王族や貴族が通うセントノエル学園へ通うことになり、学園生活が始まった。そこにはティアムーン帝国と同程度の力を持つサンクランド王国のシオン・ソール・サンクランド第一王子も通っていた。転生前、彼が帝国の貧乏貴族であるティオーナ・ルドルフォンを懇意にしたことでミーアは腹が立ち、彼女をいびり続けたことが原動力となって革命を起こした民衆の指導者となり、シオンも協力するというのが従来の未来であった。だからミーアは2人に関わり合いになりたくなかったのだが、ティオーナのメイドのリオラ・ルールーが故意ではないが貴族にちょっと道端でぶつかったということで、貴族たちにいっちゃもんをつけられてしまう。それをティオーナが庇い、そこにミーアとアンヌが居合わせてしまう。アンヌが期待する目で見てきたので、ミーアはそこに割って入った。ミーアは仇敵を助けるのは嫌であったが、自分の立場を利用して「臣民に無礼は許さない」と貴族たちに凄む。「そ、そんなつもりは滅相もありません」と逃げるように去っていく貴族たちであった。ティオーナは帝国の民だと扱ってくれたことに嬉し涙を流し、やりすぎたと思ったミーアは涙を拭うハンカチを渡してさっさとその場を立ち去る。近くにいたシオンはミーアの行動に、箱入りでもなければお人よしでもないと感銘を受けていた。

入学歓迎パーティの日、ティオーナが貴族たちの嫌がらせを受けて塔に監禁された。なんとか逃げ出したリオラが偶然出会ったアンヌに助けを乞い、それを見ていたシオンの従者のキースウッドの力を借り、助け出すことに成功する。しかしティオーナのドレスはボロボロであった。アンヌはミーアから何か好きなものを買うようにと与えられてきたお金をリオラに渡し、新しいドレスを買って来させる。その頃歓迎パーティでシオンとダンスを終えたミーアは、シオンから再びダンスの申し出をされるが、「もっとふさわしい相手がいるはず」と断った。ティオーナが到着し、シオンは彼女と踊ってあげることが貴族たちに孤立させられている彼女の立場を救うことになるとミーアの言葉を解釈し、結果として助けられたティオーナも含め2人ともミーアへの評価が高まることになった。ミーアはティオーナを監禁した貴族たちへの処分を生徒会長のラフィーナ・オルカ・ヴェールガに押し付けることでなんとか切り抜ける。だがその後のラフィーナとの会食では処分が甘いのではと彼女が問い、窮したミーアが「黄月トマトを残すことが罪深いことだと分かるのは食べるものが無くなった後のこと」と呟くとラフィーナが「悪いことをしたのはそれが悪いことを知らないから。加害者に反省を促すのですね」と勝手に解釈され、ミーアは乗っかりなんとかことなきを得た。これによってラフィーナとミーアは友達になり、ラフィーナからの評価も上がった。

飢饉への対策

ミーアの断頭台の未来はまだまだ変わらない。飢饉も国が荒れる原因の1つであり、断頭台送りを避けるためには、どうにかしなければいけなかった。飢饉になったからといってあるところには食料はある。そこでミーアはセントノエル学園で友人となったクロエ・フォークロードの父の大商人であるマルコ・フォークロードを呼び出し、海の向こうから小麦を輸入することは可能かと問う。さらに、飢饉になっても値段を釣り上げないこと、必ず決まった値段と分量で買い上げるとも付け加える。ルートヴィッヒの絶妙な価格設定もあり、マルコはそれなら旨みがあると算段し、了承して感服するのであった。

後日ミーアにティオーナから、弟のセロ・ルドルフォンの学費の資金援助を申し出る手紙が届く。ミーアは彼が飢饉に強い小麦を開発することを知っていた。ミーアはティオーナの領地に直接赴き、プリンセスタウンに学校を作るので、そこの生徒として迎え入れることを申し出る。父のルドルフォンは領地から十分に通える距離であることと、学費も抑えられることから喜んで了承した。「お礼に何かしたい」と言うルドルフォンに、ミーアは飢饉のために小麦をルドルフォン家の名前で、そしてミーアの名前も言い添えて民衆に配ることをお願いした。ルドルフォンはミーアの名前を使えば貴族たちが勝手な名目を並べ立てて小麦を持っていかなくなる、とミーアを褒め称える。

火種の火消し

ルドルフォン辺土伯領の隣に自らの領地を持つ貴族であるベルマン子爵は、自分の領地がルドルフォン辺土伯のものよりも狭いことに不満を持っており、その状況を変えるために領地内のセイレントの森の開拓に手をつける。しかし森にはルールー族という先住民族が住んでおり、抵抗を受けたのだ。ベルマン子爵は賄賂で帝国軍を動かし百人隊を派遣させた。ところが百人隊の隊長ディオン・アライアは治安維持を理由に一向に動こうとしなかった。ベルマン子爵は剛を煮やし、ミーアに援助を申し出る。ミーアはすぐにでも森に行くと言い出す。ルールー族という少数民族が反乱を起こすことも断頭台の未来へつながっていたので、仲良くなる口実ができたからだ。ミーアがディオンに会って見ると、その男はミーアの首を刎ねた男であった。ミーアはそのことがすぐ分かり気絶してしまうも、テントでいくらか眠ったことでなんとか回復する。ミーアにディオンと副長のバノスと共に森に行ってきて欲しいと同伴したディートリッヒが提案し、行くことになる。ミーアは歩いていて木の根に足を取られ転んでしまい、「この木が悪いんですわ!」と木を蹴っ飛ばす。それは森の木を大切にしているルールー族に喧嘩を売る行為であった。当然のことながらミーアたちはルールー族の襲撃に遭い、新月地区でワグルを助けたお礼にもらっていたルールー族に伝わるユニコーンのかんざしを落としまうも、逃げることになった。ミーアはそこで、ディオンに「私を護衛するために全軍で当たりなさい」と命令する。ディオンは大義名分を得て全軍撤退ができたのだった。

ルールー族との友誼と変わった未来

ミーアは無くしたユニコーンのかんざしがルールー族の目にとまり、紛争のきっかけとなって断頭台に結びつくのを恐れ、再びサイレントの森へディオンと共に向かうことにした。ディオンはミーアがルールー族と交渉すると思い込んでいる。落とした場所へ着くと、ルールー族が現れるが襲って来ない。1人の老人が進み出てきて、かんざしを持ち出し、どこで手に入れたか聞いてくる。そこへリオラが出てきて、この人は族長だと言う。族長はかんざしは娘に贈ったものだと言う。ミーアは娘はすでに亡くなっていると伝える。リオラがミーアは嘘をつく人ではないと助け舟を出し、ディオンが軍が引いたのもミーアのおかげだと言う。ミーアはさらに孫のワグルに来てもらえればいいと提案すると、族長は少ない人数でわざわざ来たことも考慮し、ミーアを信じることにした。ディオンはミーアが事前に情報を入手していたことと、かんざしを落としたこともわざとであると、さすが帝国の叡智と勘違いする。王宮に戻るとミーアは、セイレントの森を直轄領にして欲しいと父である皇帝のマティアス・ルーナ・ティアムーンに言う。マティアスは同席していたベルマン子爵に、森の近くにプリンセスタウンをつくるよう命令する。ベルマン子爵は直轄領を任されたのは名誉であると喜んで引き受けた。

ミーアが未来を変えようと奮闘し続けた結果、なんとギロチンにつながる日記が消えたのだった。ついにミーアの未来が変わったのだ。

この後本編の時間軸から分岐した別の未来から、過去の時代である本編の時代にやってきた未来のミーアとアベルの孫娘であるミーアベル・ルーナ・ティアムーンが登場し、物語を大きく動かしていく。

『ティアムーン帝国物語』の登場人物・キャラクター

主人公

ミーア・ルーナ・ティアムーン

CV:上坂すみれ
崩壊したティアムーン帝国の唯一の皇女で、人々からは自己中心的なわがまま姫と蔑まれ、17歳の時に革命軍の手に落ちた。今作の主人公である。見た目は金髪のショートと可憐で、基本的には素直で人の良い性格をしているが、内面は少し臆病で自身を「ポンコツ」と評することもあるのだ。社交ダンスに長けている一方で、キックは苦手で、全く痛くないとされている。
彼女の人生は帝国での革命が勃発し、ルードヴィッヒと共に帝国の立て直しを試みるも17歳で捕らえられ、20歳でギロチンによって処刑されるという悲劇に見舞われた。しかし処刑される直前の記憶と日記を持った状態で、12歳の誕生日前の8年前に意識が逆行し、処刑を回避するために奔走する。
逆行後も彼女のポンコツな面は変わらず、相手の勘違いや推論によって物事が進む中で、「帝国の叡智」として認識されるようになる。しかし実際にはディオンの部隊を撤退させるために木を蹴ってルールー族に攻撃させたり、レムノ王国の革命を自国の革命と比較しサンクランドが裏で糸を引いていることを見抜くなど、真の叡智を発揮する場面もあるのだ。
最初の時間軸での幽閉生活は彼女に耐性をもたらし、嫌いだった黄月トマトを平気で食べられるようになり、貧民街の悪臭にも動じなくなった。未来世界ではアベルと結婚し、8人の子供を持つことになるが、王位継承権を放棄した後毒殺される運命にあった。しかし、その未来は回避され、現在はアベルと共に幸せな時間を過ごしている。時間を遡ることで運命を変え、真の叡智と強さを発揮していく人物である。

ミーアベル・ルーナ・ティアムーン

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