人の死に立ち会う死神から見える人間模様
その多くが一話完結型の物語です。
ギャグ漫画家でもあるえんどコイチ氏が手掛けるこの作品は、コミカルな絵柄ながらも感動的なストーリーが多く存在し、人の温かみを感じるヒューマンストーリーです。
死神くんは死神として魂を冥界に連れて行く役割を持っていますが、天寿を全うしたり事故で亡くなる人に限らず、死ぬ予定では無いのに死んでしまいそうな人の元に現れ、命の尊さを諭すことおあります。死ぬ予定では無いのに、と言うのは、例えば自殺を考えている人などを含みます。
中には物語の主人公となる人物に死期が迫っているとは限らず、泥棒家業に染まっていた青年が逃げ込んだ先の老人ホームで、死期の迫っていた老人を脅そうとした青年を止めるため姿を見せたこともあります。
この物語では、泥棒の青年を「私の息子」とかばった老人女性や、老人ホームで死を間近に迎えながらも楽しそうに暮らす彼らと触れ合い、彼は人生を見つめ直すことになります。
青年の「死ぬのが怖く無いのか?」の問い、老人男性は「怖いさ、あんたのナイフなんかよりよっぽど怖い。確実な死だからな」と言いながらも、だからこそ残り短い時間を楽しく充実したものにしようとする彼らを見て、泥棒家業から足を洗うことを決意します。
しかし老人女性が心残りとして結婚指輪を息子夫婦の家に置いてきたこと、それを取りにはいけないことを知った青年は、最後の泥棒として彼女の指輪を盗むことを決意。
息子夫婦宅に侵入するも指輪は見つからず、帰ってきた息子夫婦が、ちょうどその日に指輪を質に流し、食事代に当てたことを知ります。彼らはお金に困っていたわけでもなく、ただ、彼にとっての母が大切にしていた指輪を軽視したのです。
それを知った青年は男を殴り、逃走します。
老人ホームに戻ると老人女性の命の灯がまさに消えようという時で、青年は老人女性に指輪を見せ、彼女はお礼を言って微笑み、息を引き取ります。
その指輪は青年がとっさに用意した、結婚指輪とは違うものでしたが「それが本物じゃ無いと分かっていたさ、それでもお前の気持ちが嬉しかったんだよ」とは死神くんの弁。
その後、青年を逮捕しにきた警察から老人たちは彼を庇いますが、青年は出頭し、出所後まで老人たちに元気でいろ、と老人たちも笑顔で別れます。
その姿を、老人女性の魂と死神くんたちは空から眺め「本当に親孝行な奴だな」と言ってこの物語は終了します。
この物語のタイトルは「泥棒息子の親孝行」でした。
これが特に好きな話でしたが、他のストーリーも感動的なものが多く存在します。
2014年4月にはテレビ朝日系でテレビドラマ化され、死神くん役は嵐の大野智氏が担当しました。
原作では2〜3頭身の子供のような容姿でしたが、ドラマ版では30歳前後の男性の姿で、設定や性格なども独自のものとして展開しました。