兄が妹で妹が兄で。

兄が妹で妹が兄で。

『兄が妹で妹が兄で。』とは、2012年の車谷晴子によるTS(トランス・セクシャル)ラブコメ漫画作品。陽太(ようた)と光(ひかる)は仲の良い双子の兄妹だったが、ある日2人に血のつながりがないことが発覚。陽太は自分にキスをして逃げ出した光を追いかけるが、一緒に交通事故に遭ってしまう。目が覚めた時、2人の身体は入れ替わっていた。それをきっかけに物静かで従順だった光は「お兄ちゃんの身体は返さない」と豹変する。

兄が妹で妹が兄で。のレビュー・評価・感想

兄が妹で妹が兄で。
8

入れ替わりTSFとして王道に見えて、内容はとても背徳的

兄が妹で妹が兄で、というタイトルからも直ぐに読み取れる通り主人公の陽太(兄)と光(妹)の精神が入れ替わってしまうという、よくある精神入れ替わり物。
昨今では、『君の名は。』等で有名なシチュエーションですね。しかしよくあるシチュエーションとは裏腹に、その二人の中で描かれるのは入れ替わった二人同士の恋愛感情…つまり、近親という禁忌を孕んだ恋愛模様です。それに加えてお互いの身体と心が入れ替わってしまった事による性差の認識、男性の心と女性の身体の間で揺れる陽太と女性の心で男性の身体を持った光の特異な関係は、二重に背徳的な関係を作り出しています。途中から、クラスメイトの男女二人も兄妹二人と同様に入れ替わりを起こしてしまい、事態は更に複雑に……。
そんな禁断の愛に倒錯性を重ねたような作品ですが、イラストも非常に可愛らしくコミカルな表現とロマンティックな表現が交互に繰り出されることによって、倒錯的恋愛模様をマイルドな読み心地で堪能する事が出来ます。特に、男性となった光に詰め寄られてドギマギする陽太ちゃんの七転八倒する様子はTSFというジャンルを愛好する人にとっても読みごたえのあるものだと思います。是非ともお手に取ってみて欲しい作品です。