不老不死は、幸せを与えない
「人魚の森」は、高橋留美子先生の和風ホラー漫画です。
「らんま」や「うる星やつら」とはかなり異なる、シリアスでダークな雰囲気。人魚の肉を食べて不老不死になり、人生を狂わされた人々の、深い苦悩を描いています。
主人公の湧太(ゆうた)は、元は平凡な漁師でした。ところがある日、何気なく食べたのが流れついた人魚の肉。その日から彼は歳をとらず、怪我をしてもすぐに治ってしまいます。
不老不死ではなく、普通の人間に戻りたいと、全国を旅する湧太。しかし手がかりは見付からず、500年後の現代に……とうとう人魚に出会ったものの、普通の人間に戻る方法がないと突き付けられます。しかし救いは、同じ体質の少女「真魚」と出会ったこと。
歳をとらない彼らは、一つ所に定住出来ません。あてのない旅の中で、二人は人魚の肉に関わって、人生を狂わされた人々と出会います。腕だけ化け物になった娘や、醜い怪物に変わった孤独な男。息子を母に奪われた男や、800年の月日を生きて来た、孤独な少年……。
彼らは一族の秘密として閉じ込められたり、一人で生きられないので、他人を犠牲にしたり。不老不死が幸せどころか、不幸しかもたらさない……凄く切ない、厳しい作品です。