重力ピエロ

重力ピエロ

『重力ピエロ』(じゅうりょくピエロ)とは、2003年に新潮社より発行された伊坂幸太郎によるサスペンス小説。主人公は、つらい過去の記憶を持つ兄の泉水と弟の春だ。2人は仙台の街で起こる連続放火事件と、現場近くに残されるグラフィティアートの関連性に気づき、事件の解決に乗り出す。本作は2009年に実写映画化された。泉水を演じたのは加瀬亮、春を演じたのは岡田将生。監督は森淳一が担当している。

重力ピエロのレビュー・評価・感想

重力ピエロ
9

終盤の父のセリフを聞くためにこの映画を見て欲しい

「春が2階から落ちてきた」
その言葉で映画は始まります。

原作は伊坂幸太郎、同名「重力ピエロ」。
連続放火事件と壁の落書きをめぐる謎を2人の兄弟が追うヒューマンサスペンスです。

原作ファンだった私の期待度はキャスティングを見た時点で上がっていました。どの役柄もぴったりだと思います。
物語はサスペンスでありながら、血のつながりとは何か、家族とは何かを問う内容。
本当は血が繋がっていないという事実に悩む弟・春役を岡田将生さん。
そんな弟の心配を拭い去りたい兄・泉役の加瀬亮さん。
そして何よりこの物語で脇役でありながら素晴らしい存在感を放つのが、父役の小日向文世さんと母役の鈴木京香さん。
私もこんな両親のもとに生まれたかったと思わせる2人のセリフと行動の数々。
特に私が好きなのが物語終盤の「お前は俺に似て嘘が下手だなあ」という父のセリフ。
母が受けた暴行によってできた子供・春に向かって父が言うセリフです。
春とその兄・泉は血のつながりがないということに何年も悩んできました。
そして母を暴行した犯人が出所したのを見計らい、その犯人を殺害するのです(実際は春が殺害しましたが、泉も殺害計画を立てていました)。
殺害を終えてやってきた兄弟を見て、父は2人が何をしたのかを察します。
その後発したのが先ほどの言葉。
兄弟は自分たちがしたことを後悔はしていませんでしたが、殺人によって何年も溜め込んでいた思いが解決したわけではありませんでした。
しかしその父の一言で兄弟は救われるのです。
血が繋がっていないことを3人ともがわかっていながら、何でもないようにさらっと父である自分に似ていると言った父の偉大さに感動しました。
終盤のその一言を聞くために映画を見て欲しいといっても過言ではありません。
この他にもこうしたなんでもないように見えて心にしみる言葉が要所要所に出てきますので、是非ご覧になってみてください。