切ないゾンビ映画
アーノルド・シュワルツェネッガー主演作品のゾンビ映画。
それだけ聞くとガッツリバトル系のゾンビ映画に思えますが、これは全く違い、ウワー!ギャー!のザ・ゾンビではなく、ゾンビという題材通し親子の愛を描いたヒューマンドラマとなっております。
これはゾンビウイルスにかかった娘マギー、そしてそんな娘を最期まで守り抜きたい父親の物語で、娘の目線で見ても、父親の目線で見ても、終始切ない内容となっております。
徐々にマギーのゾンビ化が進行し、悲しくも少しずつ少しずつ、人間性が失われて行く。行く先には絶望しかない、しかし、娘を収容所に送る事も殺すこ事も出来ない。
肉体派でアクティブな演技をしてきたシュワちゃんが、眼差しや仕草といった微かな演技で父親の混乱や不安、そして悲しみを表す、非常に珍しい作品ともなっております。
しかし、悲しい事にこの映画は評価が低く、シュワちゃんの主演作の中でも珍作とまで言われているものとなっております。
それはゾンビ=バトル&血しぶきという古典的なイメージがこびりついているせいでしょう。
なのでスプラッタなゾンビ映画を期待していた方には「単調で盛り上がりに欠ける」となるようです。
派手な音楽もなくグロテスクな表現もなく、フランス映画のように淡々とストーリーは流れてゆきます。しかしそれがこの映画の切なさを倍増させる要因ともなっているのです。
ゾンビにならないで欲しい。しかし時は静かに容赦なく流れてゆく。父と娘に残された時間はあとどれくらいなのか。
親側の気持ち、そしてゾンビ化していく自分を見つめる娘の気持ち、双方の心情をとらえながら見ていくと、決して駄作ではないことが分かります。
すべてのシーンが切なく、ラストには、心に悲しくも暖かいものが残る。
素晴らしい作品でした。