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アーバンギャルドという「病い」。現代社会の病みを体現し続けるアーティスト
私が今回取り上げるのはアーバンギャルドという三人組アーティストである。
メンバーは浜崎容子(Vo)、全ての作詞を手がける松永天馬(Vo)、おおくぼけい(Key)の3名であり、2007年からこの体制となる。
彼らの魅力はなんと言ってもキャッチーかつ中毒性のある音楽である。松永による「少女」「病」「死」といった現代社会の「病み」を艶やかな歌詞で描き、唯一無二の世界観を築きあげてきた。
基本的にアーバンギャルドの音楽は80年代のテクノポップで展開される。しかしながら、2012年前後からアーバンギャルドの曲調のバリエーションは豊かになっていく。「いちご売れ」では切れ味の鋭いギターサウンドが目立つロック、SNSや社会で本音を言えない者たちに送る「くちびるデモクラシー」ではテクノポップの曲調による中毒性のあるサウンドと、間奏ではで松永が「言葉を、殺すな」と訴え、一度聴いたら頭から離れなくなる。
アーバンギャルドの音楽は浜崎容子というディーバを介して病のように聞き手を虜にしていく。しかしながら、アーバンギャルドの体現する現代社会の病みとは裏腹に、聞き手に伝染するアーバンギャルドの病は、現代社会の闇に絶望する私たちの薬となるだろう。