パンプキン・シザーズ

パンプキン・シザーズのレビュー・評価・感想

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パンプキン・シザーズ
8

戦後の復興と苦悩と闇

国の為に戦ったのに停戦締結後に何の保証もなくほっぽり出された兵士の野盗化、上級層と下級層の貧富の格差による暴動、仕事も住む所も奪われた市民や更にそうゆう不安に付け込むマフィアのような集団。それらの戦災に密接に絡む軍部や政府の闇を、軍のお飾りと言われる戦災復興部隊が斬り暴いていく物語です。この漫画はただの戦争アクション漫画ではなく、戦争後の人々の戦争で残った傷跡に焦点を当てていて、その中でもメインで描かれる戦災復興部隊のメンバーの1人であるランデル・オーランド伍長が良いキャラなんです。生活の為に軍に売られ実験体にされ戦場では腰のランタンに明かりを灯せば痛覚や恐怖心がなくなり戦車をも単身で破壊する殺戮兵士になるのですが、その戦闘力や見た目に反して争い事が嫌いな穏やかで優しい性格な奴なんです。そんな彼が自分がしてきてしまった事への罪悪感や責任に押し潰れそうになりながらも戦争復興部隊に入り、そこで貴族であるにもかかわらず市民の為に働くアリス・L・マルヴィン小尉や色んな仲間に出会い、自分に何が出来るのか何をしてあげれるか苦悩しながら、戦後復興に向き合い数々の事件をカボチャを切るハサミのように切り開いて解決していく所が見所です。

パンプキン・シザーズ
10

読むたびに気付きと驚きを与えられる、愛すべき哲学書

この漫画は戦争終結後の、「戦災」に苦しむ人々のため、日々懸命に戦い続けて「復興」を目指す、帝国陸軍情報部第3課(通称パンプキン・シザーズ)の物語です。
主人公は大貴族のご令嬢にしてパンプキン・シザーズの隊長、猪突猛進で限度を超えた生真面目さが玉に瑕なアリス・L・マルヴィン少尉。そしてもう一人、戦争帰りで、見上げるほどの長身で傷だらけの大男、ランデル・オーランド伍長。
主にこの二人とその他のパンプキン・シザーズの隊員が「戦災復興」を目指して、問題解決のために東奔西走を繰り返していきます。
個性的で魅力的な数々のキャラクター達、巻を重ねるごとに壮大になり深みを増していく物語、
手に汗握る死と隣り合わせの戦い等々、引き込まれる要素はたくさんありますが、一番に注目する点は、要所要所に挟まれる哲学だと思います。
戦争・差別・正義といった、おそらくはきっと答えの出せない難解で目を背けたくなる問題に、
自分なりの精一杯の答えを出して敵に、時には味方に不特定多数の大勢にと叩きつけていき、
休む間もなくまた新たな哲学へと立ち向かって自分なりの答えを出していく、そんな物語です。
どうにもならない問題から目をそらし、答えを出すことを諦めてしまった大人にこそ読んでほしい作品だと思います。