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呼吸について
岩井俊二監督の映画の原作である小説《リリイ・シュシュのすべて》に先行する形でLily Chou-Chouは結成された。ボーカルはSalyu、作詞は岩井俊二、作曲を小林武史が担当。《呼吸》が唯一のアルバムとして発表されている。
リリイ・シュシュを語る上で必ず出てくる用語に《エーテル》がある。目に見えない物質。特に定義づけはされていないが、青のエーテルは希望、赤のエーテルは絶望を表す。リリイの曲を聴くとエーテルを感じることができるらしい。エーテルの有無については僕にはわからないが、呼吸を聴くと浮遊するような不思議な感覚に陥るのは確かだ。中でも《回復する傷》は素晴らしい。いわゆる、スキャットで歌詞はない。たぶん、映画の影響を強く受けている人間が聴いたなら、間違いなくエーテルを感じるに違いないだろう。それは岩井俊二の思うつぼだとは知らずに。ある意味に於いて僕たちは洗脳されたのだと思う。エーテルという触媒を通じて。魂のシンクロニシティを信じたのである。
少し大袈裟に聞こえるかもしれないが、この音楽にはそれなりの力があると僕は思う。騙されたと思って一度《呼吸》を聴いてみてほしい。感想を聞くのはその後でも遅くはないのだから。