美醜の大地~復讐のために顔を捨てた女~

美醜の大地~復讐のために顔を捨てた女~のレビュー・評価・感想

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美醜の大地~復讐のために顔を捨てた女~
9

怖い。けど読んでしまう。

表紙の絵がザ・レディコミ風だったので、一瞬ためらいましたが、読み始めると引き込まれました。
まず、絵がとても綺麗です。
舞台は戦後の北海道なのですが、古くさいところが全く無く、また細部まで綺麗に描かれているので、世界観を損ないません。

ストーリーは整形・復讐ものなのですが、復讐相手のクラスメートが一人一人丁寧に描かれており、いじめの主犯格でなくとも、知らずに加担していたり、心の底で見下していたり、虎の威を借る狐状態で見て見ぬ振りをしていたり、我が身かわいさの行動が目立ったりといった、「悪い人」ほど悪い人ではないけれど、誰でも一度はもやっとしたことがあるのでは、というキャラクターが次々と登場するため、「こんな人いるよな」、と自分がいつか経験したことと重ね合わせて共感しながら読んでしまいます。

また、主人公は冒頭こそかなり冷徹な面を見せますが、ストーリーが進むと、はらわたが煮えくり返るような怒りや恨みを抱えつつも、復讐相手の子どもや老親を巻き込んでしまうことや、無関係な人が巻き込まれていくことに心を痛める描写があり、「向こう側にいってしまっていない」ところが、また読み手の共感を生んでます。

徐々に、ラスボス以上にラスボスのような風格を身につけていくキャラクターがいるので、最初の頃のキャラクターであっても「捨て駒か」と思わずに、丁寧に読んでいって下さい。
そのうち最初の原型を(色々な意味で)留めなくなっていきますので。

美醜の大地~復讐のために顔を捨てた女~
9

読み進むほどに展開が気になる物語

醜い容貌に生まれつき、貧しい家庭で育ったため女学校で壮絶ないじめを受けた主人公・市村ハナ。樺太から日本へ引き揚げる途中、大切な家族さえもいじめにより奪われた彼女は名を変え顔も変えて、いじめに加担したクラスメート全員に復讐することを決意した。
一人、また一人復讐を進めていくが、リーダー格の高島津絢子に近づくにつれ、ハナの心に思いもよらぬ恐れの気持ちが沸き立ち始めていた。そしてハナから復讐されていることに気づいたクラスメートがハナにさらなる憎悪を抱いて行方を追っていた… また、財閥の令嬢で比類なき美貌を持ち、一見誰から見ても完璧な存在の絢子も底知れぬ空虚さを漂わせていた…
「ストーリーな女たち」に連載中の作品です。主人公のキャラクターもしっかり描かれていますが、彼女をいじめたクラスメート、主人公に関わる他の人物もしっかり人物像や心理描写がなされています。復讐モノにありがちな辻褄の合わない設定が無く凄絶な内容でありながら引き込まれる作品です。一話読み進めるごとに早く続きが読みたくなる作品です。まだ物語のクライマックスには早いと思いますが、このままの緻密さで最後まで描き上げてもらいたいと願っています。