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女の子になりたい男の子。男の子になりたい女の子。
女の子になりたい少年・二鳥修一と、男の子になりたい少女・高槻よしの。幼いながらも憧れや違和感を確かに感じている彼らと、周囲の人たちとを巻き込みながら淡々と物語が進行して行きます。
登場人物一人一人が、それぞれの思いを胸に日常が過ぎていくので、何かがどんどん降り積もっていくようです。小学生である彼らの葛藤や苦悩は、少し微笑ましさも含みながら、しかしやがて決断しなければいけないことを背後に漂わせています。作中に出てくるニューハーフのユキさんの存在がかなり大きいですね。優しく彼ろの今後を諭してくれます。
小学生、中学生、高校生へと成長しながら体の変化と心の変化を対比させていますが、題材と異なり作風はかなり緩く、淡々と物語が進むので、あまり生々しい表現はされていないので読みやすいかと思います。
ただ最終巻では、きちんと二人は自身の心と体に向き合っており、それまでの緩さを一気に引き締めるものがあります。同時に社会的な彼らの立場を再確認し、問題が私たちの身近なものであったことにハッとしました。ジェンダー問題はかなり繊細な題材ですが、うまく一つの作品に仕上げており違和感の自覚から決断までを描き切っています。ぜひ15巻全て一気読みしてほしい作品。