壮大な物語、いつまでも余韻が残る作品
ココロにぐっとささる。やるせない。それが、私が「ギャング・オブ・ニューヨーク」から得た印象だ。アクションとラブシーン、ドラマがほどよくミックスされていることもその一因だと思う。一番多いアクションも、ただ残酷性を見せるためじゃないと感じたし、何が底に流れているんだろうと気になる、奥深さを感じさせる。
この映画には原作があり、1928年のハーバート・アズベリーの同名の歴史書から一部を再構成したもの。19世紀初頭から約100年のニューヨークのギャングたちのもようを綴った本だ。また映画公開予定時に、あの貿易センタービルのテロが起きたため公開を自粛、1年後に公開の運びとなったらしい。
物語の舞台は「ファイブ・ポインツ」という、アイルランドで飢饉に見舞われ、アメリカに移住してきた人々が詰め込まれる街。やくざや権力者の横暴が日常茶飯事の街で、身を守るため自分も悪いことをしなくてはいけない。主人公はそこで出会った権力者ウィリアム・カッティングのもとに身を寄せ、父親を殺された復讐を果たすために生きていくことになる。
どうにもならない世の中で「なにか大切なもの」を持ちながら生きること、が表現されていると思う。戦争や危険な抗争が日常的にある時代だろうと、治安が良くなった現代の先進国であろうと、虚しさや悲しみ、身に降りかかることに押しつぶされながら生きることに変わりはない。息もつかずに見終わって、少し厳粛な気持ちと共に心が温まった気がした。愛する者、理屈では測れない復讐、そういった大切なものを主人公が捨てずに生きているからだと思う。
また随所に、底辺で生きる者のドラマや、厳粛さを感じる場面がちりばめられている。女スリのジェニーがファイブ・ポインツを牛耳るカッティングに育てられただけでなく、子供もはらまされたことがあったり。徴兵暴動勃発時に命を落とした人々の遺体1つ1つに弔いの蝋燭を立てている場面。悲しい歴史に対する思いを感じさせる。
歴史という複雑なものを扱いながらも、くどくどせずテンポがいい。復讐を胸に生きる主人公の力強さ、恋愛模様、歴史の負の側面。それらを一大叙事詩にまとめあげているところが秀逸だと思った。孤独感を抱えている人、虚しさをどこかに抱えている人などなど…この映画を見てヴィヴィッドに感動するんじゃないかと思う。