忘れかけた人への思いやりと、適度な距離感が生み出す素敵な関係
芸人カラテカの矢部太郎さんが住んでいる、一階が大家さんのお住まいになっている下宿での大家さんとの触れ合いが描かれています。
大家さんが2018年の時点で90歳におなりになっているはずのご高齢なのですが、大家さんの半分しか生きていない矢部さんと妙に意気投合し、最初は過干渉に感じていた触れ合いが大事な時間になり、徐々に家族のようになっていく過程が素晴らしいです。
絵もほのぼのとしており、大家さんと矢部さんの温かな人柄にマッチした絵柄で読みやすいです。
大家さんの家に住む前の物件で無茶苦茶な撮影をさせられたため退去を命じられた矢部さんですが、結果的に人生を変える出会いと、このような素晴らしい作品を生み出すきっかけになったとしたら、追い出されたことも一概に悪い事だと言えず、人間どこで災いが転じて福となすかわからないと思いました。
また、今、若い世代でも高齢者でも、「おひとり様」と呼ばれる独居世帯が多くなっています。矢部さんと大家さんのような暮らし方は、独居世帯同士が協力して生きていく、一つの社会問題の解決方法としても、非常に注目すべきだと思います。
大家さんの昔の話を聞いている際の、独特の絵の表現(衣装が変わったり、タクシーが浮かぶなど)も、矢部さんのクリエイターとしてのセンスを感じ、一見単純な絵柄のようですが今後も楽しみな才能の片鱗を感じます。