長く受け継がれ愛される、前向きな医療マンガは健在!
「スーパードクターK」というマンガがある。
「ブラックジャック」と「北斗の拳」を組み合わせた主人公、代々「K」の名を継承する万能医師を中心とした物語は一話完結型の非常にスカっとする「少年マンガ」だ。
だがその主人公はやっぱりあくまで人間だった。続編「ドクターK」で発病し、やがてその命を失うだろう――というところで話は終わった。
ところがその「K」には別の流れがあった――。
この物語の主人公・神代一人は都会から遠く離れた村で独特の医療体制の中、無免許で治療を行っていた。そこに外からの医師が入ってきたことで、閉ざされた村、そして一人の人生も変わっていく。
そしてこの物語にはもう一人の主人公・黒須一也がいる。前作の「K」のクローンに当たる少年である。
冒頭からしばらくは一人の活躍と独特の医療体制、途中からはこの一也の医師としての成長物語が主流となっていく。
興味深いのはこの一也の成長物語である。
基本一話完結型の物語にも、並行して大きな流れがある。一也はかつての天才医師のクローンとして初期にはその身柄を狙われることも多々あり、母親の死にも立ち合ってしまう。それ自体は重い話である。
それでも彼には村で過ごす中での一人との師弟関係や、中学・高校・医大における友情があった。
かつての「K」のマントをまとい、放浪する時期もあったが、それでも彼は恩師や仲間の元に戻ってくるのだ。
この人間関係の描き方はやや古風であるが、常に前向きである。
それは出てくる他の医師についても同様だ。例えば旅行で羽目を外しかけたとしても、事故現場に出くわしてしまったら即座に医師の顔に戻る。
物語全体を貫く、この前向きさ・医師ならばこうあって欲しいという理想の姿。それはフィクションであるが故にできることである。
多くの医療マンガは、どうしても医師と症例、そしてリアルな感情のドラマになってしまいがちである。
それはそれで面白い。
だが、そればかりでは少々寂しくないだろうか?
万能医師、独特の村、落ち込んだとしても這い上がる逞しい主人公、悩みつつも成長する若き医師達、周囲の頼れるプロフェッショナル。
そんな彼らの、時勢を取り込んだ歯切れの良い物語は、我々にとっても清涼剤になるだろう。