ロッキーシリーズ一番の家族愛
一般的にロッキーシリーズファンは、『ロッキー5』に辛口である。
スタローン自身が本作に対してネガティブな発言をするなど、公な失敗作品として語られる作品だ。しかし私は、ロッキーシリーズの中でも、『ロッキー5』はかなりの良作だと思っている。前作で、イワンドラゴとの死闘は見応えもあり、まさにアメリカンヒーローの地位を確固たるものしたロッキー。だがこのシリーズは、ロッキーの泥臭さく不器用な街のゴロツキから始まったはずだ。
『ロッキー5』は、何も持たざる者だった初期ロッキーの原点回帰ともいえる作品だと思う。脳のダメージにより引退を決意したロッキーは、肉体的には限界だったかも知れないが、まだまだ燃え尽きてはおらず、トミーガンという若手ボクサーのトレナーになる。自分がミッキーにしてもらっていたように二人三脚で全てを注ぎ込み、チャンピオンボクサーに育ってあげる。その間に、息子ロッキージュニアは、思春期特有の家族との距離感が生じておりロッキーに対しても距離を持ち始める。悪徳プロモーターに唆され、自分が一番だと証明したいトミーガンは、ロッキーとの対戦を要求する。かつての教え子との子弟対決。ただしこの作品は、リングには上がらない。ファイトマネーも無しの、ストーリートファイトでの戦いが始まる。そのシーンがテレビに映し出されエイドリアンやロッキージュニアが駆けつけ、かつての愛弟子をKOし家族が一つになり、ロッキーがただの父になる。
これぞまさにアメリカといえる家族愛でヒーローからただの父になるロッキーの燻る事のない晴れやかな気持ちが映し出されている。次作に繋がる父と息子の絆は必見である。