野球と登場人物の成長が一気に楽しめる漫画
おおきく振りかぶっては高校野球漫画です。このジャンルの漫画はいろいろありますが、ここまでキャラクターの心情を細かく書いている野球漫画は少ないのではないでしょうか?
この漫画の主人公「三橋廉」が所属する野球部は1年生10名と女監督で構成された珍しいチームです。特に主人公の三橋廉は自己肯定感が低く、いつもびくびくしています。キャッチャーの阿部隆也とバッテリーを組んだ当初はまるで主従関係のようで、周りからも心配されていました。しかし、日々の生活を通していくうちに、2人の関係が変わります。野球を通してだけでなく、会話の流れ、他者との関わりなど三橋と阿部にかかわる全ての事柄が、彼らのお互いに抱いている印象を変えていくのです。その描写の仕方が本当に巧みで、まるで自分が彼らの近くで成長を見守っているかのようでした。
またこの漫画のすごいところは、主要人物だけでなく、いわゆるモブキャラにも細かな心情描写を入れてくるところです。主人公チームのメンバーだけでなく、敵チームにもたくさん会話をつけます。そのためかこの漫画には敵チームのような存在はなく、すべての高校野球部の成長を記録しているかのようなストーリーになっています。これらの細かな心情描写の影響か、「おおきく振りかぶって」では1つの試合に約3~4巻分の話数を使用しています。野球だけでなくストーリーも楽しみたいという方には本当におすすめの野球漫画です。