AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-

AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-

『AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-』は2017年に放送された、ゲーム『AKIBA'S TRIP』を原作とするアニメ。全13話。略称は『アキバニ』。ストーリーはアニメオリジナルだが、ゲームシリーズで登場するキャラクターも登場する。
主人公は伝木凱タモツ(でんきがい たもつ)という青年。彼が謎の生命体"バグリモノ"とヒロインの万世架まとめ(まよなか まとめ)との戦いに巻き込まれたことで、秋葉原の街から出られず服をすべて脱がされたら蒸発して死ぬ体となってしまう。タモツは仲間たちと共にバグリモノとの戦いに立ち向かっていく。ゲームでは「ストリップアクション」と呼ばれる特殊なシステムがあり、敵の服を脱がすことができるが、アニメではバストトップの描写は存在しない。

AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-のレビュー・評価・感想

AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-
10

ゲーム原作のアニメだからという前置きは忘れて欲しい

かなり際どい作品であることを念頭に置く必要があります。しかしここ数年来のアニメ作品の中で、異色の作品でありかつエンターティンメント性に秀でた作品でもあることには保証します。原作はアダルト要素を含んでいるゲームであるため、偏見を持って見られる方は多いでしょう。実は私もその一人でした。しかし大手の無料動画サービスで偶然この作品を知ってからは本作品の大ファンとなりましたよ。こんなワクワクを感じるのはいつ以来のことでしょうか。それからは次作が公開されるのが待ち遠しくてたまらないほどでした。
作品の概要は、現実に存在する東京の秋葉原を舞台に、人外の存在である種族と人間の戦いがテーマとなってなっています。秋葉原の描写が素晴らしい。私は残念なことに神田界隈までしか足を運んでませんが、とてもリアルにアキバの街並が再現されています。エンディングのクレジットで多くの店舗並びに関係者が列記されていることから鑑みても本作に対する期待の大きさが見て取れます。
では簡単なストリー紹介を。主人公は大学浪人の19歳の青年です。彼は幅広い趣味の持ち主で、潜在能力がとても高い善良なオタクです。主人公は兄が大好きな妹と一緒にアキバを訪れた時に異様な光景を目にします。一人の少女(以下ヒロインA)がコスプレ集団と乱闘騒ぎを起こし、あっという間に倒してしまいました。そこへアキバの自警団が現れて注意喚起をしますが、彼女は聞き入れずに驚異的な身体能力を発揮して風のように立ち去りました。その姿を主人公は呆然と見ていましたが、同時に彼女に興味を持ちました。次に主人公は自分の本来の目的であるフィギュア屋へ立ち寄り、金髪の不思議な少女(ヒロインB)と出会いました。
彼女とは一つのフィギュアの争奪を巡った後に意気投合したのですが、そこへAが現れ、いきなりBと乱闘騒ぎを起こしてしまいました。実はAは人間とは異なる闇の存在なのですが、ある理由により仲間の元を去り、自分の信念に従って行動をしていたのです。Bは人間なのですが、超頭脳と驚異的な身体能力を併せ持ち、独特の美的感覚によるコスプレ姿であることからAの目には自分と同種族であると思い込んでしまったのでした。戸惑いながらもBは互角に応戦し、やがて二人は主人公を残し別の場所へ移動してしまいました。呆然としている最中、別の場所で爆発騒ぎが起こり、主人公は別行動をしていた妹を探すため現場へ急行しました。幸い妹は気絶していたものの無事でした。ですがそこは闇の種族の手によって言いなりになる人間達の巣窟と化していたのです。襲われる兄と妹。そこへ救いの手を差し伸べたのは意外にもヒロインAでした。彼女は人間との共存を望んで仲間を裏切り、アキバと人間達のために孤独な闘いを続けていたのです。でも一瞬の隙を衝かれて負傷してしまいました。それでもAは健気に兄と妹に気遣って逃げるように告げました。自分の非力さを痛感しながら主人公はその言葉に従い、その場を去りました。しかしAのことが頭から離れない。そこへ衣装を新たにしたBが現れました。闇の種族は大気に弱く、脱衣させるとその能力を喪うという特性があるのですが、彼女は人間ですから脱がされても変化はありませんでした。それを見てAは自分が誤解していたことを告げて立ち去ったと言うのですが、事の真相を確かめるためにBはAを探していたのでした。
主人公はAを探すためにBへ妹を託して一人危険渦巻く修羅場へ向かいました。Bは止めましたが、主人公は自分の信念を吐露しその言葉に感激したBは妹を引き受けその姿を見守るのでした。その頃、Aは危機に陥っていました。闇の種族の女ボス(コスプレイヤーに扮している)が手下を総動員し、包囲されていたのです。容赦の無い暴力を見舞われ、折れたバットで胸を串刺しにされようとしたところへ主人公が消火器を噴出させて救いに現れたのですが力の差は歴然でした。改めて止めを刺そうとした時に主人公は身を挺してヒロインを助けました。敵がひるんだ隙を衝いて二人は脱出に成功しますが、主人公は虫の息となっていました。このままでは彼が死んでしまう。ヒロインは意を決して禁断の秘儀を施して彼の生命を救いました。口づけをすることでその相手には驚異的な能力が授けられてその眷属とすることが出来るのです(結果として主人公にはその代償が重くのしかかることになるのですが…)。
こうして主人公は新たな生命を得て超人誕生、となるのです。その能力は一団を瞬殺できるほどの凄まじいものでしたが…。秘儀を施された代償は大きくヒロインと闘うことを宿命づけられた主人公は、最初こそ大きなショックを受けましたが、その後はむしろ負ければ即座に死という刹那的な生き方に己の存在価値を見出すほどのプラス思考となります。彼の趣味であるアマチュア無線、アイドルのおっかけ、格闘ゲーム、カードゲームといった要素が描かれ、ディープな世界観が広がるのが本作の特質です。妹を含めた三人のヒロインがアイドルとして活動するというのもアキバ事情に則しているのでは、と思えて楽しかった。イヤホンズという現実の声優ユニットがそれぞぞれのキャラに扮して物語を展開するというのも斬新でした。
この他にもメイド文化やアキバグルメなど、盛り沢山な内容です。一見の価値はあります。ゲームが原作だという先入観を捨てて楽しんで下さい。エンディングのそれぞれの楽曲も秀逸ですよ。