キサラギ

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キサラギ
10

小栗旬のヘタレっぷりが見る価値あり

映画『キサラギ』は、『相棒』や『リーガルハイ』の脚本家である古沢良太が手掛けた作品です。
もともと舞台向けに作られたこの作品は密室劇で、一室のみを舞台にしていながら、さまざまな人間模様を描き出しています。

物語は、自殺したアイドル・如月ミキの一周忌のために、チャットで知り合ったファンの男性たち5人が集まるところから始まります。
初めは如月ミキの思い出話で盛り上がりますが、ひとりの男性が「如月ミキは本当に自殺したのか」と疑問を呈し、それをきっかけに皆の推理が始まります。

話していくうちに、集まったファンの男性たちそれぞれが如月ミキと関わりを持っていることが明らかになります。
幼馴染の安男(やすお)。小さいときに別れてしまったが、実の父親のいちご娘。如月ミキと知り合いの雑貨店の店員スネーク。如月ミキの元マネージャーのオダ・ユージ。
反面警視庁の管理課に勤める家元(いえもと:小栗旬)は、いつも如月ミキにファンレターを書いて返事ももらっており、如月ミキの一番のファンであると自負していました。ですが他の4人には勝てなかったことで落胆します。4人に比べると自分はただのファンだと落胆してしまうのです。

如月ミキの死因については、当初は自殺とされていました。
しかし幼馴染の安男の証言により、その日如月ミキは「ゴキブリを退治できないことに悩んでいる」という電話を受けていたことが判明します。
そこからゴキブリを退治するために部屋中に洗剤をまいて疲れて眠ってしまい、ベッド側にあったアロマキャンドルが地震によって倒れ、火事になったのではないかという推理をします。

最後までわからなかったのは、火事になったのに如月ミキは窓の側でもなく玄関でもない、物置付近で亡くなっていたことでした。
しかし如月ミキの実の父親の証言により、物置にはファンレターが置いてあったことが判明します。
そこで、如月ミキは逃げる際ファンレターを持って逃げようとしたが間に合わなかったのではないか、という結論に達します。
家元はほかの4人のような関係性は持てなかったのですが、自分が書いたファンレターを大事にする如月ミキの気持ちに感動するのでした。

この結末に達するまでの登場人物の心情描写が秀逸であり、特に小栗旬演じる家元の表情の変化が印象的です。
また、チャットで知り合った人々が実際にオフ会をするという設定は古いかもしれませんが、作品の魅力を損なうことはありません。

『キサラギ』は、見事に構成されたストーリーとキャラクターの魅力で、何度も観たくなる作品です。
特に小栗旬のヘタレっぷりの演技は観る者を引き込んでくれます。まだ観ていない方にも、ぜひおすすめしたい作品です。