ラ・ラ・ランドのオマージュしたミュージカル映画まとめ
2016年に全米で公開されたミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」。 母国アメリカをはじめ世界中で大ヒットを記録し、アカデミー賞では監督賞をはじめ6部門で賞を受賞しました。そんな「ラ・ラ・ランド」にはミュージカル映画の名作のオマージュがちりばめられていて、それも見どころになっております。 今回は、「ラ・ラ・ランド」でオマージュされている映画について紹介します。
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『シェルブールの雨傘』(シェルブールのあまがさ)とは、1964年に制作された恋愛映画。フランス・西ドイツ合作の作品である。脚本・監督はフランス出身のジャック・ドゥミが務めた。ミュージカル映画であり、作中の何気ない会話も含めて、セリフは全て完全にレチタティーヴォ(話すような独唱)として歌われている。全編音楽のみで他の台詞が一切なく、当時としては画期的な映画様式であった。1983年に日本で初めて舞台化されている。
「シェルブールの雨傘」はカトリーヌ・ドヌーヴ主演の1964年のフランス映画である。
全編の台詞が歌で表現されたミュージカル映画で、第17回カンヌ国際映画祭グランプリを受賞している。
全三部とエピローグから成り立ち、色彩豊かな映像や1960年代のファッションのイメージから「おしゃれな映画」としても名が挙がる作品である。
舞台はアルジェリア戦争まっただ中のフランスの港町シェルブール。
傘屋の娘ジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)と自動車整備工のギイ(ニーノ・カステルヌオーヴォ)は、
未来を夢見ながら幸せな日々を送る恋人同士だったが、ジュヌヴィエーヴの母は若すぎる二人を心配し、結婚には反対していた。
ある日、ギイに召集令状が届く。離ればなれになる悲しみの中、ギイの出兵前夜に二人は結ばれ、
ギイが戦地へ赴いた後にジュヌヴィエーヴの妊娠が発覚する。
手紙が2ヶ月に1回しか届かない淋しさと不安を抱えていたジュヌヴィエーヴだが、やがて母の恩人である宝石商のカサールと結婚することになる。
自分の子ではないお腹の子供ごと引き受けるという誠意に応えたのであった。
その翌年、ジュヌヴィエーヴの結婚を知らずに、怪我のため除隊となったギイはシェルブールに戻るが、傘屋はなくなっていた。
伯母からかつての恋人の結婚の話を聞き、恋の終わりを確信したギイは自暴自棄になるが、病床の伯母の世話をしていたマドレーヌの叱咤により、ガソリンスタンドの経営を始める。
その後、ギイは自分が立ち直るきっかけをくれたマドレーヌと結婚し、子供も産まれた。
時が流れ冬になり、クリスマスイブの夜、ギイのガソリンンスタンドを訪れたのはジュヌヴィエーヴだった。
「あなた幸せ?」「とても幸せだよ」これが最後の会話となり、2人は別れ、それぞれの人生をゆくのだった。
60年近く前の作品とは思えない色彩の鮮やかさに、ミシェル・ルグランの切ない名曲。
どのシーンを切り取っても、ポストカードのように美しいシーンばかりなのだが、ただのおしゃれ映画では済まされない。
どの登場人物にも人間らしい魅力があり、悪役と思われるような人間がいないのもまたこの映画の良さである。
ギイとの結婚に反対していたジュヌヴィエーヴの母でさえ、ギイからの手紙を捨てたりすることもなく、娘を思いやる優しさが感じられる。
そして、ギイの子供は男の子で名前はフランソワ。ジュヌヴィエーヴの子供は女の子で名前はフランソワーズ。
どちらも、かつて2人が自分たちの子供に付けたいと話していた名前である。
時が経っても、お互いどこかでお互いを想い続けていたのだろうし、本当に忘れてしまうことはきっとないのだろうと感じる。
ジュヌヴィエーヴとギイの2人だけに視点を当てれば「悲しい別れ」になるのかもしれないが、
その周囲の家族の存在があることで、2人にはきちんと幸せもあるのだと感じられる、とても奥深い作品である。