攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX / 攻殻機動隊 S.A.C. / 攻殻S.A.C. / 攻殻S

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『攻殻機動隊S.A.C.』は2002年放送のTVアニメ及びそのシリーズ。AD2030年、内務省直轄独立攻性部隊・公安9課が「笑い男事件」を追うストーリー。
続編の『S.A.C. 2nd GIG』ではテロリスト「個別の11人」を追う事件、『Solid State Society』は主人公・草薙素子が失踪後に謎のハッカー「傀儡廻し」に関わる事件となっている。
神山健治監督版『攻殻機動隊』シリーズ。

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX / 攻殻機動隊 S.A.C. / 攻殻S.A.C. / 攻殻Sのレビュー・評価・感想

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX / 攻殻機動隊 S.A.C. / 攻殻S.A.C. / 攻殻S
10

上質なストーリー

いわゆる大人向けアニメの中でも「萌え」ではない「燃え」の作品。近未来の設定を活かしてストーリーを作りこんでおり、奥行きのある展開が魅力。たとえば攻殻機動隊の世界観では電子技術の発達により、ヒトの脳を電子化することにより肉体とインターネットがアクセスできるようになっている。ヒトの脳すなわち思考が電子情報に置き換わっていく中で、ヒトのアイデンティティがどこにあるのか、ストーリーやセリフから哲学することも魅力。原作に比べてアニメ版とくにSACはわかりやすいよう適度に簡略化されており、上質な洋画のように楽しめる。

また、声優陣も大塚明夫、山寺宏一や田中敦子など洋画でお馴染みのキャスティングのため、アニメ声でがっかりするようなこともない。ベテランといわれる声優が揃っており、非常に世界観ともマッチしている。

攻殻機動隊の世界では体を機械化することも可能で、登場人物の多くは機械の体をもっている。このとき、こまかな描写が魅力で着地するときの効果音から体の重々しさを感じることができ、世界観とよく馴染んでいる。洋画の「セブン」や「インセプション」などが好きな人なら、楽しめるであろうおすすめのアニメ作品である。

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9

サイバーパンクにおいては外せない名作、そのアニメシリーズのひとつ。

本作は士郎正宗氏の漫画を原作とする作品の一つであり、最初の映像化である映画やさらに後に発表されたARISEの中間に位置づけられるアニメシリーズになる。
神山健治氏の手がける本作は第二クールまで続いており、全編を通しては"笑い男"や"個別の十一人"といった主要事件を追いながらも、話ごとに別々の事件を取り扱った主人公・草薙素子をはじめとする面々のストーリーがつづられている。
個人的にこの作品に対して最も惹かれた点は、電脳化や義体化といったヒトと機械との融合が深く進んだ環境というこちらから見れば”非現実”な世界の中、”現実”に住む我々にとっても決して無視できない"魂"や”自我”のようなもの、さらには難民や薬害などといった社会的な問題に関する問いかけに満ちている点であった。
作品の構成としても、高度な技術の発達によって得られた恩恵の裏、反対に浮上した問題やイデオロギー・経済といった無くならない対立、巨大組織の裏で蠢く闇のようなものがありありと描写されているという点においては目を見張るものがある。
アクションシーンの描き方も緊張感に溢れているだけに、アニメとしてももちろん優秀でありながら、さながらドラマのような緻密さ・奥深さもまた兼ね備えたひとつの"作品"として素晴らしい。
そういう土台作りをされたうえで飛び出してくる話が、我々人間自身の問題に関する問いかけであればこそ深く考えさせられ、また長く心を掴む作品として仕上がっている。
私自身も視聴しながらそう言った問いへの答えを模索し、作品世界を生きる彼らの心情に少しずつ沿いながら行く末を見守っていただけに、ひときわ深い没入感を感じることができた。
今となっては二千年代という過ぎた時代の作品になってくるが、現代作品からこれほど奥深い作りの作を探し当てようとするのは至難の業であろう。
もっとも書き手作り手がこういうものを作りにくい環境にあることも思い馳せるべきことなのだろうが、幸いにも攻殻機動隊という作品群に対する制作意欲は長く業界から去りきりはしないようにも見える。
それこそ映画化や新シリーズ制作の報は今も時折目にするし、おそらく今後もまた発表されることがあるだろう。
かの草薙素子のようにネットの海のどこかに潜みつつ、姿かたちを変えながら時折姿を見せる。
作品そのものにもそんな彼女を模するようなものが潜んでいるかと思うと、確かには言い表せない何かを感じさせられてしまう。
この筆舌に尽くしがたい感情たちを是非、今後にわたってより多くの人に知ってもらいたいと切に願う。